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新トラック運送経営のヒント(31)安全規制強化は前向きに
2012年8月10日
先日、中部運輸局はある運送会社に対して3日間の営業停止処分をしました。死亡事故を起こしたドライバーの拘束時間などの告示基準違反が31件以上であったことに基づくものです。今回は、次のようなコメントが追加されていました。
「この死亡事故は荷主からの無理な運行依頼が事故の背景にあった可能性があることから、再監査を実施しました。その結果、各荷主から無理な運行依頼など、安全運行を阻害する事実はなかったことを事業者から確認しました。なお、事故などの背景に?荷主による行き過ぎた運行依頼の疑い?がある場合は、荷主の運行指示内容を調査のうえ、荷主に協力要請を行うなど事業者・荷主が協働して安全運行のできる環境づくりの促進を強化する方針であります」国交省が、末端の事故を起こした運送会社だけでなく、?元請け荷主?に関する調査と安全協力要請を強化する方針を打ち出したことは、大きな前進ではないでしょうか? 特に元請けが運送会社の場合、国交省の管轄のため容易に監査は可能なはずです。実際、監査基準では、「輸送の安全確保義務違反について、元請けに対する下請けなどからの苦情などにより、特別監査を行うことが必要と認められる元請け」や「死亡事故や公安委員会の通報により、事業者に輸送の安全確保義務違反があると疑われる場合に、当該輸送の安全確保義務違反の関与が疑われる元請け」に監査を実施できることになっています。
この二つの基準を厳格に運用すれば、元請けが下請けを叩くのではなく、真の荷主(メーカーなど)に対して、安全確保のための協力要請を真剣にせざるをえない状況を作り出すことができます。「さんざん叩かれた運賃」で「法令違反の長時間運行」の結果、多重死傷事故の発生という「悪の連鎖」。この連鎖を断ち切るために、国交省が元請けに監査をしたり、真の荷主に協力要請をすることは必要不可欠です。
国交省は、関越道での高速ツアーバスによる死傷事故で、トラック運送業界でいうところの荷主にあたる旅行会社に、旅行業法に基づき監査に入りました。ということは、元請けへの監査は、さほど難しいことではないのです。運送会社としては、このような動きを活用し、いかに元請けに働きかけ、適切な運賃や労働環境を確保できるかです。安全規制の強化を前向きに捉え、したたかに活用していくこと。これからの運送会社の社長に求められる力です。
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