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冷凍・冷蔵LCL実験をスタート HOP構築への取り組み(後編)
2012年10月18日
札幌大学と北海道開発局が進めている「北海道国際輸送プラットホーム(HOP)」構築の取り組みについて、これまで航空便による小口混載の冷蔵・冷凍サービスがスタートしたことを紹介してきた。HOPは今後、同様の小ロット低温物流の安価な仕組みを国際海上コンテナ輸送にも展開し、提供するサービスの多様化を図っていく予定だ。同開発局は9月から、20フィートリーファーコンテナを活用した海上LCL(小口混載)輸送の実証実験を始めた。
同実験の第1弾は9月27日に苫小牧市内で荷物をコンテナに積み、同30日に苫小牧港を出港、韓国・釜山港で積み替えて、10月18日にシンガポール着の予定で実施。苫小牧北倉港運、さっぽろ産業振興財団、ヤマト運輸などが協力し、菓子類、乳製品、野菜を輸送。第2弾は17日に苫小牧港を出た後、釜山港を経て、24日に台湾着の予定で行う。ナラサキスタックス、リオンなどが協力する。
同実験で使うリーファーコンテナと同様のモデルの公開が9月27日、三ツ輪商會苫小牧事業所で行われ、コンテナなどに施した工夫について同開発局が説明した。コンテナは、積水化成品北海道の協力で特別に製作した「合成樹脂を詰めた間仕切材」で内部を冷凍区間と冷蔵区間に分けた。2温度帯を創出させ、ロットの小さい荷物でも1コンテナを仕立てやすくした。既存のコンテナに一工夫をすることで、汎用性のある冷蔵・冷凍混載システムを安価に構築。
冷蔵区間は多少ひんやりする程度だったが、間仕切材を剥がすと、マイナス20度に設定されていた冷凍区間から冷気が押し寄せた。荷役作業の効率を高めるため、ロールボックスパレットを活用。通関手続きなどの迅速化を期待している。冷蔵区間の荷物は、断冷材や発泡スチロール容器などで更に覆い、食材・食品によって適切な温度を保つ。
実験では、温度変化や商材品質評価などを検証し、輸送商材の品質保持状況を確かめる。また、通関・検疫の対象をロールボックスパレットごととすることで、リードタイム短縮を狙うほか、問題発生時における「1コンテナ全量廃棄のリスク回避」の効果も探る。実験がスムーズに進めば、来年度以降に海上LCL輸送もHOPのメニューに載る予定。
同開発局港湾空港部港湾計画課の佐々木亮氏は「北海道からの小ロット食品の輸出は数が絶対的に少なく、1コンテナを埋めることが難しいため、これまでほとんどが首都圏経由で送られていた。混載が増えれば、北海道から直接の輸出がしやすくなる」と説明し、「うまくいくようならHOPにノウハウを提供し、海上輸送でも小口混載、冷蔵・冷凍サービスを提供したい」。 このような実験は、平成22年度に札幌市の建設コンサル会社のドーコンが、農水省の「農山漁村の6次産業化対策事業に係る農林水産物等輸出課題解決対策事業」の一環として既に実施し、海産物や野菜などを香港に運んだ経緯がある。この時は、外気温やコンテナ内の冷気の停留、エチレンガスの発生などの影響を受け、冷蔵品で一部、販売が出来ないくらいに萎え、低温障害や老化・腐敗が起きた。コスト低減効果や冷凍品の品質はおおむね良好だったものの、課題を残した。
佐々木氏は「ドーコンの実験を発展させる形で行う。作業時間を短縮させるためにロールパレットを使うことも新たな取り組み。2温度帯の海コンを造り、ロールパレットを活用して輸送するノウハウは、それほど難しいものではないが、運用としては全国初のケースとなる。間仕切材をもっと簡単に着脱できるようにするなど改善の余地はある。よりよい海上LCL輸送の仕組みを考えたい」と話す。(玉島雅基)
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