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    社会保険未納の災禍 一部従業員未加入で年商3%相当額支払い通告

    2013年1月23日

     
     
     

    truck2_0121.jpg 「そんな話は聞いたことがない」と、トラック運送事業に詳しい社会保険労務士までが驚く前代未聞の出来事。そんな?災禍?がこのほど、中堅規模の運送A社を襲った。給料の手取り額を少しでも増やしたい思いから社会保険への加入を嫌うドライバーは少なくないが、そうした一部従業員の存在を指摘された同社は2年前にさかのぼる格好で「未納金」を計算され、結果として年商の3%に相当する金額を納めるように通告されたのだ。行政処分の材料に加えられたことで近年、トラック業界での社保未加入は大幅に減少しているものの、「加入」「未加入」の従業員が混在する事業者が圧倒的で、対岸の火事では済ませられない状況だ。



     トラック事業では5年前から、新規許可の取得要件に社保の加入が加えられる一方、既存事業者は未加入が行政処分の対象になるなど、「健全な競争の実現」というトラック業界の要請に応じる格好で国交省もチェック機能の強化に乗り出している。ただ、「以前の職場でも社保に入ったことはなく、いまさら入っても意味がない」「手取りを多くしたい」というドライバーは依然として多い。

     そのため、表向きは社保の「適用事業所」になっていながらも、一部従業員は未加入のままにしている事業者が圧倒的に多い。A社も、全従業員の一部(数十人)が「本人の希望によって」未加入の状態だった。労基署の担当者が、A社が県外に構える営業所を訪ねたのがきっかけで、その際に見つかった不適切な部分について運輸局に通報。運輸局の監査で社保未加入(一部未加入)が発覚したことで、今度は年金事務所へ連絡が回るという流れになったようだ。

     「社保という畑違いの仕事であるにもかかわらず、運輸局が出てきたらキビシイ」と前出の社労士。「労基署は労災や雇用保険の担当であり、社保は年金事務所。つまり、労基署の担当者が来ただけでは今回のような問題は起きないが、制度に基づいて運輸局へ通報することで情報が年金事務所にまで回ることになる」というのだ。

     「未加入の従業員は早々に手続きし、これからは保険料を払うという方向で年金事務所と交渉すべき」と、2年前までさかのぼって支払う必要はないと話す事情通や、関係者からは「最悪でも減額に応じてもらうべきで、払えないといえば向こう(年金事務所)も応じないことはない」との声もある。運賃の差し押さえもにおわされたA社は交渉の末、当初に提示された金額の約3分の1の保険料を分割(12か月=金利4%)で支払うことになったというが、それでも同社の年間売上高の1%強に相当する。

     日本年金機構では「使用人が4人以下の個人事業主など一部を除き、社保に加入する・しないという選択肢は存在しない」(広報担当)と強制項目であることを説明したうえで、仮に従業員の一部に未加入の実態が把握できれは「さかのぼって2年間の保険料を徴収する権利があり、場合によっては売掛金や不動産を差し押さえるなど国税と同じ扱いになる」と指摘。年金未納問題がクローズアップされて以降、対応が厳しくなっていることは間違いないという。

     「さかのぼって社保に加入した場合、それまで個人が支払われていた国民健康保険や国民年金の保険料は後日、返還される」(年金機構)というが、国保も国民年金も払っていないドライバーもいる。そうしたケースでの個人負担額は大きく、「すでに退職を申し出ている者もいる」(A社社長)と負の連鎖も生じているが、同社の?災禍?は、「あすはわが身」の深刻な問題かもしれない。(長尾和仁)

     
     
     
     
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