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処分事業者を公表ミス 国交省が誤った内容HPに掲載
2013年3月22日
行政処分の厳格化と同時に、その内容について国交省は「ネガティブ情報」として同省のホームページで自動車運送事業者の実名などを公表しているが、実際の処分内容とは大きく異なるデータがこのほど同HPに掲載されたことが波紋を広げている。指摘を受けた同省は即座にネット公表を中止し、1週間後に事情説明とともに「正誤表」を公開したが、その数は325件にのぼった。実際より軽い扱いになった事業者もあったが、知らないところで重い処分に変化していたのは137件。なかには文書警告(0点)だったにもかかわらず、事業許可の取り消しとなる「86点」を科されたバス事業者もあった。
同省では従来、地方運輸局の作成資料を基に全国の運送事業者の行政処分状況が一覧できる「ネガティブ情報」を公表してきた。原則として翌々月の初日に公表する格好で、今回問題になった1月分の行政処分は3月1日付でネット公開された。ところが、その内容がハチャメチャで、不審に思ったサイト利用者が5日の午前に?被害者?となった複数の事業者に確認したことでデタラメが発覚。事業者から抗議を受けたこともあって、同日の正午には閲覧不可の状態となった。
公表が再開したのは1週間後の12日。325件のデータの再チェックと、原因を説明するために相当の時間を費やす格好になった。全国情報を閲覧するページで「エラー」の経緯などについて大まかに説明しているが、事業者の信用を失墜させかねない事態を招いた責任を踏まえれば、いささか具体的な説明に欠ける内容だ。
誤って公表された行政処分(違反点数)のうち、実際より重い内容になっていたのはトラックとバス、タクシーで計137件。行政処分とはいえない文書警告(0点)だったにもかかわらず点数が科せられた事業者が68社にのぼったほか、事業許可の取り消しとなる80点超を付けられる災禍に見舞われた事業者も複数あった。
今回のミス発覚で、全国一覧を作成する作業を国交省が民間に業務委託していることも明らかになった。一覧の基礎資料となる地方運輸局のデータに間違いはなく、実際の処分が変更されることもないし、今後の累積点数にも影響は一切ないが、間違った情報が流れた4日余りの間のサイト利用者は相当数にのぼるだろう。
被害者となった事業者からは「信じられない。デタラメが噂になり、信用問題につながる可能性もある」(雑貨を扱う事業者)、「頭を下げれば済む役人の世界とはワケが違う。チェックが甘いから起こるミスだ」(原料輸送などを手掛ける事業者)、「書き込みサイトなどでヘンな情報が流れていないか、こまめにチェックするよう社員に指示した」(食品輸送の事業者)といった声が聞かれる。
また、文書警告でありながらも事業継続に黄色信号が灯る違反点数に塗り替えられたバス事業者は、「いまのところ被害は出ていないが、事業者はコンプライアンスに必死で取り組んでいるわけで、それを監査する立場の行政も慎重に対応してもらわないと困る」(社長)と断じている。
国交省では「地方運輸局のデータはエクセルで作成されており、2種類の変換ソフトを使ったソート作業の過程でデータの入れ間違いが発生した」(自動車局安全政策課)と、業務を委託した民間会社の作業段階でミスがあったと説明。公表する前に情報元の地方運輸局に再チェックさせることで回避できる可能性もあるが、そうした過程は用意されていなかったという。
今回のミスの後始末について「現時点では申し出のあった事業者に謝罪文書などを送っている」(同)。仮にミス発表が原因で被害が発生した場合、「個別に対応していかなければならないと考えている」。
行政処分の情報公開を地方運輸局の段階でとどめていたら起こらなかったトラブルといえるが、この点を聞くと「利用者にとって全国一覧の利便性は高い」と説明。今後、同省には管理者として万全の対策が求められる。(長尾和仁)
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