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民法改正で約款どうなる? 経済界は反発
2013年4月5日
「現代化と透明性向上」を目指して現在、民法の大改正作業が行われている。明治29年(1896年)以来、全面的な改正はなく、判例で形成された多くのルールが現行民法の条文に反映されていないという。改正では現在、全く規定のない「約款」について定義付けし、諸規定を創設する方針だが、経団連などは「消費者保護に偏重」「自由な商取引を阻害する規制強化」などとして国の改正作業開始以来、一貫して反対の姿勢を崩していない。運送業界に馴染み深い「約款」はこれからどうなっていくのか。
民法の債権関係規定について、国は「社会・経済の変化への対応を図り、国民一般に分かりやすいものとする」として、09年10月に法制審議会に民法(債権関係)部会を設置。改正要綱の作成作業に取り組んでいる。11年4月に中間論点整理(第1ステージ)を終え、今年2月26日にようやく中間試案(第2ステージ)を取りまとめた。法務省の筒井健夫大臣官房審議官は「約款の重要性はどんどん増しているのに、民法に約款の文字はなく規定もない。これをきちんとしようということになった」と話す。「『契約』は互いに内容を理解し、合意した上で法的拘束を受けるものだが、約款は『不特定多数』を相手に一方の当事者(試案では「約款使用者」と表記)が用意し、相手はほとんど読まない。トラブルが生じても裁判では『知らなかった』では済まず、黙示の合意があったとみなされる。ここに問題がある」という。
このため、中間試案は消費者保護色が強く、経団連を中心に経済界が反発。反対意見は主に「不意打ち条項」と「不当条項規制」を指摘する。不意打ち条項とは「予測もできないような内容が約款に紛れ込んでいるケースで、例えば空気清浄機を購入したら『純正フィルターを毎月購入する義務』が含まれていた」など。不当条項規制は「相手方に過大な不利益を与える」もので、極端な例では「この製品に欠陥があっても当社は一切責任を負いません」というもの。
経団連などは「これらが拡大解釈されたら消費者に都合の悪い中身は、すべて『知らなかった』で通用する。ほとんど読まれることのない約款の効力がなくなる」と反発。筒井氏は「今回の約款規定創設は、インターネット売買など新サービスの急増から消費者が不利益を被らないように整理しようという観点が大きい。保険や鉄道、運輸、電気など伝統的な産業で、かつ国にコントロールされている業界はメリットがあってもデメリットはないはず」と強調する。
こうした国の動きに連動して、独自に約款の見直しを進める団体や企業も増えている。観光庁と消費者庁が共管する日本旅行業協会では現在、「標準旅行約款」の見直しを進めている。「キャンセル料」は「適用になる期間を早める」方針で、消費者優位の民法規定ができるなら少しでも事業者利益を確保したい思惑がある。
トラック業界では、全ト協が標準引越運送約款の見直しを昨年から始めたが、都内の引越専業者は「国や他業界の動きを注視しながら、事業者のための改正約款を目指してほしい」と話す。(土居忠幸)
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