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    新たな懸念「持病で事故」に厳罰 危険運転致死傷罪を適用

    2014年5月22日

     
     
     

    jiko_0519.jpg トラック運送経営にまた一つ、新たな懸念材料が加わりそうだ。危険運転致死傷罪と自動車運転過失致死傷罪を刑法から切り離して一本化する格好の「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(自動車運転死傷行為処罰法)が20日に施行するが、そのなかで特定の病気を抱えたドライバーが死傷事故を起こした場合には危険運転致死傷罪が適用されることになった。アルコールや薬物の影響で正常な運転ができない状態で負傷事故を起こした場合と同じく12年以下の懲役(死亡事故は同15年以下)という刑罰は運転者個人に科されるが、職業ドライバーの管理が厳しく求められている現在のトラック業界としては無関心でいられないのも確かだ。



     「アルコールにしても薬物にしても確実なチェックと管理が運送会社に求められており、そう考えると(今回の持病の問題も)同じようになる可能性を感じる。法定の健康診断の義務項目に入れてもらうといった制度改正がなければ、現場での対応は難しい」と雑貨品などの輸送を手掛ける兵庫県の運送社長。同社には数年前、今回の政令で示されたドライバーの病気によって深刻な問題に直面した経験がある。

     新法の条文に記された「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気」については先に、「統合失調症」「てんかん」「再発性の失神」「低血糖症」「そううつ病」「重度の眠気の症状を呈する睡眠障害」の六つが政令で定められた。「再発性の失神」については「脳全体の虚血により一過性の意識障害をもたらす病気であって…」と補足されているが、まさに同社が遭遇したケースがそれだった。

     業務中に意識を失い、救急車で病院に運び込まれた同社のドライバー。しかし、担当した医師の診断書には「一過性の現象(意識消失発作)で、就労(長距離の車の運転)は問題ない」と記載されていた。このケースではドライバーの家族との話し合いで円満退職になったものの、「診断書を手に『働けないのはオカシイ』とドライバーが詰め寄るような最悪の場面も想定していた。今後は法を盾にした解雇が可能になるのかもしれないが、ドライバー不足に悩むトラック業界だけに複雑な思いも絡んでくる」(同社長)と話す。

     対面点呼の際にドライバーの様子がおかしいことに気づき、乗務を中止させた経験がある広島県の運送社長。ドライバーは糖尿病で変に汗をかいているのが気になった。血糖降下剤を服用していたようだが、眠くなるから食事を後回しにすることも多く、そんな生活リズムから低血糖症のような状態の自覚もあったらしい」という。

     一方、新法の施行を踏まえた改正道交法も6月1日にスタートするが、それによって公安委員会は運転免許の受験や更新時に病気の症状などが質問できるようになるとともに、ウソの回答をした場合は1年以下の懲役または30万円以下の罰金が科される。また、守秘義務の例外扱いとすることで、医師が任意で患者の診断結果を公安委員会に届け出ることも可能になる。

     持病によって就業の機会が奪われないための配慮も忘れてはならないが、ただでさえ人手不足に頭を抱えているトラック事業にとっては既存のドライバーの健康管理に加え、雇い入れの際の対応に新しいチェックポイントが加わったことは否定できない。法務省では「行政罰は別として、刑法そのものに(個人と事業者の両方を罰する)両罰規定はない」(刑事局刑事法制管理官室)と話すが、事業用車両と職業ドライバーの管理者として運送会社にも新たな課題が突き付けられることは間違いない。

     
     
     
     
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