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60時間超の割増賃金率 妥協点を見いだせず
2014年10月3日
平成22年4月施行の改正労働基準法により、1か月に60時間を超える時間外労働を行う場合の法定割増賃金率が50%以上に引き上げられた。中小企業については猶予措置がとられ、従来の25%以上のまま据え置きとなっていた。施行から3年が経過し、法律上の見直し時期を迎えた今、一律に引き上げるか、一部にとどめるのか、はたまた猶予のままでいくのか。業界にとって、決して影響が少なくないだけに結論が待たれるが、現状では妥協点は見いだせていないようだ。
9月30日に開かれた厚労省労働政策審議会労働条件分科会(岩村正彦分科会長、東京大学大学院法学政治学研究科教授)では、同省が行った実態調査の結果やこれまでの審議から、業種別の実情をふまえた対応の必要性について意見が交わされた。平成25年度労働時間等総合実態調査によると、法定時間外労働の実績(平均的な者)は、すべての事業場規模で平均時間や限度基準を超えた時間働く事業場の割合は減少。特に小規模事業場において、月10時間以下、年100時間以下事業場割合の比率が高まり、全体としての法定時間外労働は減少している。
規模別に見ると、大企業の平均は12時間3分で、45時間以下は98.6%(うち10時間以下55.3%)。対する中小企業は、平均6時間48分で、45時間以下98.2%(うち10時間以下78.2%)と、大企業よりも時間外労働時間は抑えられている結果となった。最長の者でも、特に小規模事業場において、平均時間も月45時間、年360時間超の時間外労働のある事業場割合が減少。大企業の割合が8.1%であるのに対し、中小企業は4.4%にとどまっている。
これらの調査結果を受け、労働者代表からは猶予措置の解除を進める声が多数挙がった。?松伸幸委員(全日本運輸産業労働組合連合会副執行委員長)は「数字をみても、中小企業に与える影響はそれほど大きくないと考えてもいいのでは」、宮本礼一委員(JAM書記長)も「中小企業だけいつまでも適用しないのはおかしい。ダブルスタンダードを解消すべき」とした。
割増賃金率引き上げの適用が猶予されている中小事業主の範囲は、中小企業基本法に定める中小企業の範囲とほぼ一致しており、運輸業は「資本金の額または出資の総額が3億円以下」または「常時使用する労働者数が300人以下」となっており、ほとんどの事業者がこの基準に適応する。
使用者代表から小林信委員(全国中小企業団体中央会労働政策部長)は「運送業として適正な運賃を得られる仕組みを作れればいいが、荷主に交渉できない現状では難しい。このような業界をさらに厳しい状況に立たせることになる」とし、すべての業態に適用するのではなく、部分的に対応する案を支持。一方、労働者代表から?松委員は、小林委員の説明に一定の理解を示した上で、「運送業や建設業など、時間外労働が1日に5?6時間あるような職場に就職したいと思うだろうか。人材確保という観点からも、適正化を進める必要がある」とした。さらに新谷信幸委員(日本労働組合総連合会総合労働局長)も「大手企業と労働条件をそろえることで、優秀な人材が中小企業にも目を向けるようになる」としている。
厚労省は平成27年度概算要求で「年次有給休暇取得のための支援策」として、中小企業事業主に対する「所定外労働の削減」「年次有給休暇の取得促進」「その他労働時間等設定改善のため必要な取り組み」への助成金の支給を盛り込んでいる。
首都圏の事業者は「我々は決まったことを地道にやるしかない」ともらす。「大手ができない仕事を中小企業が請負っている中で、本当にコンプライアンスを守れるのかという疑問は残る」とする一方で、「これまでの経験上、頑張って取り組んだことが、会社の信頼など違う面で生きているとの実感がある」とも話している。
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