-
ブログ・小山 雅敬
196回:コロナ後を勝ち抜く運送業経営のキーポイント
2020年11月24日
【質問】コロナショックによる経済危機の影響で、経営状況が一層厳しくなってきました。コロナ後の運送業の経営において留意すべき観点がありましたら教えてください。
年明け後、現在に至るまで、運送業を取り巻く経営環境は、コロナ禍により大変厳しい状況が続いています。荷主や取扱貨物などに応じてコロナの影響度合いにばらつきが見られますが、運送業の経営者は、今回のコロナショックを教訓に、今後を勝ち抜くための体制チェックを行う必要があります。
コロナショックにより、明確になった運送業経営のキーポイントを、次に10個挙げてみます。
①「1荷主に依存しない。1荷主への依存度は全体の3割未満にする。同一業種の荷主に偏らない」(特に物流子会社は外販へのシフトが必要)②「季節の繁閑を平準化する」(荷主構成や取扱貨物の見直しを検討)③「自社車両の採算性を重視する」(傭車の収益に頼らない。今回のコロナショックで傭車売り上げが落ち込み、自社部門の採算割れで赤字に転落した運送会社が散見)④「求貨求車のネットワークに入っておく」(人と車両不足から荷不足に急変。環境が変化してもフレキシブルに対応できる体制が必要)、⑤「景気後退期こそ若年者の採用に注力する」(今は優良な人材を採用しやすい時期。次の景気回復期に基盤人材となる若手を採用する)⑥「手元流動性を確保しておく」(資金繰りが行き詰まると、経営を維持できない。無利子で借りやすい時期には流動性を確保する。手元資金の余裕度は安全性につながる)⑦「経営コストの変動費化を意識する」(固定費が大きいほど環境変化に対する耐性力が落ちる。運送業はもともと固定費が大きい業種であり、意識的に変動費化を志向するほうが安定する。賃金体系も、保障給化より業績貢献度による変動費化の方が運送業には適する)⑧「労務リストに備える」(未払い残業代請求対策、労働時間の管理、同一労働同一賃金対策、残業時間の上限規制や拘束時間見直しへの対策、最低賃金上昇対策など、今後増加する労務リスクに備える。コロナ禍中でも多数のトラブルが発生中)⑨「コンプライアンスと収益性の両立を考える」(どちらか一方では経営が成り立たない。自社の最適解を検討する。専門家の意見も採り入れるとよい)⑩「経営戦力上必要な投資は躊躇しない」(例えば、自社に隣接する土地が急に空いたら、積極的に取得または賃借して倉庫建設等将来への足掛かりにするなど)
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
関連記事
-
-
-
-
筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
「ブログ・小山 雅敬」の 月別記事一覧
-
「ブログ・小山 雅敬」の新着記事
-
物流メルマガ