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    派遣ドライバー短期利用は違反 行政処分の対象

    2011年10月21日

     
     
     

     ドライバー不足に悩むトラック事業者にとって「派遣ドライバー」はありがたい存在だ。繁忙期と閑散期の季節波動への対応、事故や免停での即戦力など幅広く活用されているが、最近は需要が拡大する一方で、派遣会社に「ドライバー」登録する人は年々減少している。
     さらに本紙の取材で、労働者派遣法と貨物自動車運送事業法に大きなミスマッチがあるものの、一部では「公然の秘密」として派遣が行われていることも分かった。トラック事業者が「2か月以内」の短期間で派遣ドライバーを使用するのは違反行為で、「発覚した場合、トラック事業者が行政処分の対象になる」と国交省は説明している。


     貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条では、常時選任の運転者として「日々雇い入れられる者」「2月以内の期間を定めて使用される者」などは選任してはならないと規定。ところが現実には数週間、数日間の契約はざらで、1日だけ、または数時間単位の派遣もあり、短時間の派遣料金をアピールする派遣会社さえ存在する。
     「ミスマッチ」は取材中、人材派遣を扱う東京労働局需給調整事業部の担当者が指摘した。ただ「運送会社の問題なのでこちらの管轄ではない」というので国交省に問い合わせると、貨物課(適正化対策室)では「派遣ドライバーは常時選任ではないので対象外。違法ではない」との返事。
     ところが、大手のヤマト・スタッフ・サプライのように「貨物運送事業者への2か月以内の派遣は法律で禁じられています」と、利用者に事前に告知する派遣会社もあると伝えると、安全政策課に回され、「違反」の判断。同課によれば「『常時選任』は正規の、通常のドライバーという意味。派遣ドライバーはこれに代わる者なので輸送安全規則が適用され、違反になる。法律というより省令違反。当然、車両停止など行政処分の対象になる」との説明だった。
     これまで表面化していないのは、こうした国の認識の曖昧さに加え、「2か月」ルールを無視しても派遣会社、トラック事業者、また派遣スタッフの誰も損する者はなく、現場優先で看過されてきたためらしい。また、一部の派遣会社ではドライバーでなく「倉庫内作業」「乗務員補助」などと偽って行うケースもある。多くの中小派遣会社は「『2か月』を順守したら商売にならない」と本音を漏らす。
     99年の派遣法改正で、トラックドライバーも派遣できるようになって以来、着実に市場は拡大し続け、02年度は推定4.5兆円規模にまで成長。リーマン・ショックで一時落ち込んだものの、現在は再び回復基調にある。
     需要が伸びる中、「派遣ドライバーを志望する人は減少している」とランスタッドの担当者。「若者の車離れによる運転免許の問題、労働環境などが背景にある」と指摘する。
     市場の変化に伴い、とくに首都圏では派遣会社の撤退と参入が入り乱れ、コンプライアンスを無視しても顧客獲得に走る派遣会社も散見される。「登録スタッフは全員社保未加入」も多い。東労局には「高速道路は走るなと言われ、眠らずに8時間連続運転させられた」など派遣ドライバーからの相談も急増。改善基準告示違反、労基法違反、派遣法違反など所管官庁の異なる違反事案が交錯する。
     どれも法令を順守すれば問題はないが、運輸行政と労働行政のミスマッチによる「2か月」ルールで処分されるのはトラック事業者。問題改善に向けた早急な取り組みが待たれる。

     
     
     
     

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