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    処分内容は妥当か 一部で提訴探る動きも

    2012年4月13日

     
     
     

     「運送会社を困らせたいのか、それとも正しい方向へ導こうとしているのか、そこがわからない」と、かねて運輸当局による行政処分の在り方に疑念を抱いてきたトラック事業者は少なくない。根拠となる違反内容と基準日車数などの資料に照らせば、自社が起こした事故や違反によるペナルィーの深刻さは理解できても、「本当に処分の内容が妥当で、再発防止に向けた行政指導がどんな形で行われているのか」といぶかる声は絶えない。
     とはいえ荷主など取引先が抱く心証を考えれば、抗議したい思いをこらえながら一方通行の厳しい処分を受けてきたというのが従来の流れだが、ここにきて業界の一部では運輸局長を相手取り損害賠償請求の裁判を起こそうとする動きが出てきた。その一人である運送経営者は「訴訟を通して処分内容が適切か否か、こちらの主張をぶつけてみたい」と、すでに弁護士との打ち合わせに入っている。


     直近の3年間だけを見ても車両停止が全国で4000件超、さらに厳しい事業停止処分も208件にのぼっている。なぜ、これだけの行政処分が延々と続くのかという視点で問題の根本が議論されてきた経緯はない。さらにいえば、荷主を巻き込む形でなければ実現が不可能な正常化への責任を、実運送事業という一面にだけ押し付けてきたともいえる。
     運輸当局から処分の通知を受けたトラック事業者には弁明の機会が与えられるが、違反の事実を覆すだけの新しい材料などがなければ、弁明は単なる「処分の軽減化を陳情する」という行為でしかなくなる。当局の担当官も「弁明書が出てくるケース自体が少なく、仮にあったとしても根拠となる資料が提出されることはなく、『厳しすぎる』といわれるだけ」としており、むしろ弁明のチャンスを放棄して処分開始の時期を少しでも早めようとする事業者も少なくないという。
     運輸局長を相手取った提訴の検討に入っている事業者らも交通事故などを端緒に厳しい行政処分を受けた経験を持っているが、「処分はきっちりと受け止める」と弁明することはなかったという。「追い詰められればネズミもネコを噛む。会社が受けた不利益は真に妥当な行政処分によるものなのかどうか、とことん追及したい」と息巻く。
     別の事業者も「監査といっても時間的にそう長くなく、いくつかの資料は持って帰られた。ただ、それから処分の通知が届くまでの1年間ほどは特に何があるわけでもなく、こちらから処分がいつになるのか問い合わせを入れたくらい」と明かす。また、旧知の同業者が廃業したという関係者は「処分が直接の原因とはいわないが、仕事量が激減したのは間違いなかった」と話し、「もし書類だけで判断されるなら、完ぺきな書類を作成することが安全管理の現場で最優先すべき宿題になってしまう」と皮肉交じり。
     似通った違反や事故であったとしても、細部まで見なければ処分の重い・軽いは計れない。そういう意味ではケースバイケースということになるのだろうが、それだけに当事者にとっては明快な根拠が得られない印象が強い。ある事業者は「100点でなければ、明日は我が身。スムーズにやろうとする日常業務の工夫や、培ってきた長年の勘・経験などは『まずは書類』の現状では見向きされない」と漏らす。
     こうした実情に「誰かが代表でやらないといけない」と、訴訟の検討に入ったトラック事業者ら。「運送会社は必死に取り組んでいるが、守れない。では、どうやればパーフェクトに法律が守れるのかを教えてもらいたい。処分が妥当か否かという点と合わせ、『…だから守れない』という実運送事業者の立場からの主張を堂々とぶつけてみたい」と話している。

     
     
     
     

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