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ブログ・野口 誠一
第52回:倒産防止第2条・志と哲学を持つ
2004年6月11日
「再起の条件15カ条」の第2条は、「志と哲学を持つ」である。ここで注意を要するのは、志と野心を混同してはならないということである。両社は似て非なるものと言っていい。志は社会的規範を逸脱することはないが、野心はともすれば暴走しがちで、手段を選ばないことがある。
たとえば、経営者なら誰しも収益を上げたい、シェアを伸ばしたいと切に望む。そのために日夜コスト削減、販路開拓、新製品開発などに取り組んでいる。これは正しい経営努力であり、経営者本来の姿と言っていい。が、なかには収益やシェアにとらわれるあまり、社会規範や経済ルールを踏みはずす経営者も少なくない。バブル崩壊以来、はてしなく続いている企業不祥事がそれである。
コストを削減するために原発トラブルを隠したり、ウラン溶液をバケツで運んだり、収益を上げるために米、肉、食品などの産地を偽ったり、シェアダウンを恐れるあまり自動車のクレーム、リコールを隠したりと枚挙にいとまがない。これらはすべて企業による犯罪であり、経営者(陣)が志を野心に売り渡した結果である。なぜ売り渡したかといえば、彼らに「企業は社会の公器である」「経営は社会貢献の手段である」という確固たる経営哲学が確立されていなかったからである。
いま、大企業はこぞってやれCSR(企業の社会的責任)だ、コンプライアンス(法令順守)だと掛け声が勇ましい。さんざん不祥事を起こしておいて何をいまさら……という気がしないでもないが、ともかく前非を悔い、これからは良き企業市民になるというのだから是としよう。と思っていたら談合やカルテルなどの課徴金を引き上げる独禁法の改正には「絶対反対」だという。なんじゃこりゃ。どこまで法令を順守する気があるのかさっぱりわからない。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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