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ブログ・川﨑 依邦
中小運送会社の経営改善の記録(2)最悪の状況に追い打ち
2012年7月6日
平成19年11月に経営者となって、最初の一歩は常駐者をシーエムオーから派遣したことである。白羽の矢をあてたのは私の息子(長男)である。26歳になったばかりだったが、プレジャーの現場実務責任者として送り込む。
状況は最悪であった。働いているドライバーと会社の信頼感はズタズタである。配車担当者とドライバーの間にも冷たい風が吹いており、必要な事以外は口もきかない。ドライバーの働く姿勢もモラルも低下している。中には、平気で当日の欠勤をメールで配車担当者に連絡してくるドライバーもいるほどである。そこへ、会社を揺るがす一大事が生じる。ほぼ100%の売り上げを占める荷主から、3か月後の平成20年2月をもって運送契約を解約すると言い渡される。理由は経営者が交代したことであるが、真因は今までの労使トラブルによって数々の迷惑を被ってきたことによる。荷主にしてみれば、巻き込まれたくないということである。「さてどうするか」。絶対絶命のピンチに直面する。3か月後には売り上げがゼロになる。「とりあえず配車権は返上して下さい。必要があればまた連絡しますよ」。荷主の言葉である。
当時の会社の状況は以下の通りである。労働組合員7人、元組合員3人、非組合員4人と、三つに分裂している。一人でも入れる労働組合を勢いよく結成したものの、闘争方針をめぐって分裂していた。
きっかけは、会社と36協定を結ぶかどうかにあった。会社と36協定を結ばないと残業が出来ないので、早く結ぼうとする者が組合を脱退したわけである。36協定とは労働基準法第36条に基づく時間外労働をするための協定のことである。組合員は残業をせずにさっさと帰る。荷主は困る。しかし、元組合員と非組合員は残業をする。「裏切り者」と、組合員は元組合員と非組合員をにらみつける。「誰のおかげで残業代の未払いを会社からもぎ取ったのか。我々労働組合の力ではないか。良いとこ取りするな」というわけである。三つのグループがいがみ合い、会社の雰囲気は悪い。
そこへ荷主からの最後通告である。3か月後に運送契約を解約されて生き残る道はあるのか。当初は弁護士に相談する。40年もの付き合いのある会社に対して、一方的解約は不当であると、損害賠償を求めようとした。実際、荷主に抗議の内容証明を送りつけた。しかし、よくよく考えてみると、荷主に喧嘩を売って良いことはない。荷主に喧嘩を売る運送会社として悪いイメージが残る。そこで緊急全体会議を開くこととする。
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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