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  • ブログ・川﨑 依邦

    経営再生物語(176)受容と傾聴〈事例A〉

    2017年11月3日

     
     
     

    〈まず素直に聴くこと〉


     A社長は、創業者型のオーナーである。会社では、ワンマンで通っている。ところが家庭の中では、そうはいかない。15歳の息子に振り回されている。思うようにならないのである。?受容?という精神科医の言葉をかみしめてみる。今までの子育ての、どこがいけなかったか。一つは、母親に任せっきりであったこと。日ごろはかまってやれないので、何でも欲しいものは与えてきた。「我慢する」ということを身体に染み込ませることができなかった。我慢すること、耐性が弱い息子となってしまった。

     さらに、大きなプレッシャーというか、期待を掛け過ぎた。自分は仕事に全力を尽くすことで、経営者として成功している。しかし、中学校しか出ていない。「お父さんは中卒だが、お前は必ずいい大学に入れ。いい大学に入って、お父さんの事業を継いでほしい」。過大な期待をかけた。親としては当たり前の願いである。しかし、それが息子にはプレッシャーとなる。

     そして、夫婦の仲である。創業時の苦しい時は、女房がいろいろと助けてくれた。次第に事業が成功すると、ついつい夜の世界に足を踏み入れるようになった。たまに外泊もする。浮気である。夫婦仲が悪くなる。息子の前でもケンカする。

     こうした成育歴の中で不登校が出現し、今では家庭内暴力化しつつある。

     「確かに、こうした原因で息子は悪くなった。それでは、これからどうしたらいいのだろうか。?受容?ということの具体的実践は、どうすればいいのか」

     A社長は、息子を責めることをやめた。現実を受け入れることとした。実に重苦しい決断であった。その上で、息子の声に、素直に耳を傾けようとした。

     現実を受け止めることは、まず素直に聞くことから始めよう、と思ったわけである。温かく包み込むことだ?―と思い定めた。毎日対話した。息子のポツリポツリとした悩みが、心に届いてくるようになった。彼も苦しんでいた、ということが、実感できるようになった。

     中学3年生の夏ごろから、家庭内暴力もやんだ。その代わり、無気力状況が深まっていた。1日中ボンヤリしている。「必ず立ち直る」との信念を持って、A社長は息子と向かい合った。

     「逃げることをやめた。あきらめるのはまだ早い。オレは息子を愛している」と、繰り返し繰り返し、自分に言い聞かせる日々。

     夫婦の会話も、十分取った。夫婦仲の悪かった原因である浮気もやめた。「わたしは母親失格です。妻としても至りません」。自信喪失状態の妻の心とも向き合ってきた。眠れない日々で、心労がたたり、子育ての自信を失ったわが妻。「本当に申し訳ないことをした。家庭のことをすべて押し付けてしまった。お金さえ稼いでいればいい、と思って、家庭での役割を果たしていなかった」。深く反省するA社長、呪文のごとくつぶやく。

     「受容と傾聴」(つづく)

     
     
     
     
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  • 筆者紹介

    川﨑 依邦

    経営コンサルタント
    早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
    63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
    中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
    グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。

    株式会社シーエムオー
    http://www.cmo-co.com

     
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