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ブログ・高橋 聡
第290回:令和時代の運送業経営 残業時間削減編(87)
2025年6月5日
「頑張る運送業経営者を応援します!」というシリーズで「令和」時代の運送業経営者が進むべき方向性、知っておくべき人事労務関連の知識・情報をお伝えしています。
今号から「残業時間対策編」として時間外上限規制(2024年問題)への対応について解説してまいります。(その4)
1.労働時間削減の方法
「労働時間」は「拘束時間―休憩(分割休息)時間」で求められます。24年問題の対象は「時間外時間数」(残業時間数)ですので「労働時間削減」つまり「休憩(分割休息)時間」の正確な把握を行うことは「時間外時間数」の削減が可能となります。運送業の「休憩時間数」は分単位で把握することが必要です。一斉休憩の適用除外業種であるので小間切れの時間を把握することが必要で「デジタコ」の活用が必須となります。
ドライバーに対しデジタコボタン操作を徹底させるには「給与」を引き下げない仕組みとすることが重要です。事例のA社では残業削減の達成状況、協力状況に応じ、賞与額をプラスするなどのインセンティブを与えました。
「車内カメラ」と「休憩ボタン」を連動させる仕組みは有効です。A社でも当初は抵抗しているドライバーが数人いてカメラにタオルをかけ妨害するといったことが起こっていましたが、その都度「勤務改善指導書」を文書で提示、再発の際には懲戒も辞さない旨を通告、一部メンバーは退職という事態はありましたが、現在は落ち着いており残業削減効果が上がっています。
「車内カメラ」は社員を守るためのものであること、「休憩ボタン」を押す際に「車内カメラ」が切れる仕組みとしドライバーのプライバシーを守る仕組みとすること、「休憩ボタン」を押して「労働時間数・残業時間数」が削減したとしても給与額は下げないことを徹底し、大半のドライバーは協力していただくこととなりました。
まずは、経営者が意識を変えることが重要です。例えば1日30分程度の休憩時間数を追加で認識することで月間10時間程度の残業時間数の削減につながるため、A社では現場を分かっている管理者がデジタル日報をチェックし、「休憩」「待機・手待」時間を区分することなど、地道な取り組みを行ってさらなる削減に取り組んでいます。
2.事例のポイント
残業削減は24年問題の本丸であると同時に労災・過労死認定、未払い残業請求などの金銭的影響の大きい労務トラブルから会社を守る最重要事項です。荷主側に問題がある場合は荷主に折衝すること、国交省のトラック・物流Gメンに相談することなどの手段が取れるようになってきています。
経営者が意識を変え、ドライバーの意識を変えていくことが求められます。
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筆者紹介
高橋 聡
保険サービスシステム社会保険労務士法人
社会保険労務士 中小企業診断士
1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。 -
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