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ブログ・高橋 聡
第291回:令和時代の運送業経営 残業時間削減編(88)
2025年6月19日
【残業時間対策編】88
「頑張る運送業経営者を応援します!」というシリーズで「令和」時代の運送業経営者が進むべき方向性、知っておくべき人事労務関連の知識・情報をお伝えしています。
今号から「残業時間対策編」として時間外上限規制(2024年問題)への対応について解説してまいります。(その5)
1.給与変更による労働時間削減
24年問題への対策として「労働時間・残業時間数」を削減するために「給与変更」を行った会社が多数あります。
弊社のお客様でも「出庫時間の順守」「荷主交渉による待機・手待時間削減」「ドライバー教育」などにより残業時間数を削減させた会社様がありますが、「給与変更」により残業削減に取り組んだ会社がありますので、事例を解説します。同社は24年問題の対応のため社長直轄で残業削減に向けたPJを立ち上げ、改革に取り組んでいました。
23年時には各営業所とも長時間運行になっており、A、B営業所では残業時間が年間上限の960時間を基準とした平均値月80時間以上となっているなど対策が急務でした。
A、B事業所は固定荷主のルート配送業務とともに一般配送などフリー運行も多く、かつ、夜間の発着も多い事業所で22年頃から削減に取り組んだものの、なかなか成果が上がっていませんでした。最も長時間のドライバーは残業が100時間を超過している実態でした。
同社の給与制度は60時間の定額残業および定額超過分については超過残業代が支給されるため、同じ運行を行っているドライバーの時間数を分析したところ、「稼ぎたい」と考えるドライバーは意図的に時間を延ばしているというのがA、B営業所の所長の分析でした。
そこで配送する店舗数、収受運賃などを基準とした出来高を導入し、「時間が削減されても出来高を上げる仕組み」を導入したところ、残業時間数が80時間を下回る実績となりました。同時期に運賃交渉を行い15%程度の引き上げとなったため、出来高基準を改定、給与総額が増加することとなりました。
2.事例のポイント
給与体系と残業時間数には密接な関係があります。同社での出来高の導入は24年問題で求められる残業削減につながっています。意欲に報いる適正な出来高の導入は残業削減、事故削減、ドライバーの健康維持にもつながっていきます。関連記事
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筆者紹介
高橋 聡
保険サービスシステム社会保険労務士法人
社会保険労務士 中小企業診断士
1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。 -
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