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    物流改革を通じた成長戦略PT 山内委員長に聞く(前編)「持続可能な物流の実現を」

    2020年9月11日

     
     
     

    ヤマトホールディングスの山内雅喜会長が委員長を務める経済同友会の「物流改革を通じた成長戦略PT(プロジェクトチーム)」は、新たな提言「物流クライシスからの脱却~持続可能な物流の実現」をまとめた。

    提言では、「わが国の物流の現状」として「輸送形態はトラック中心だが、深刻なドライバー不足」で「2028年には28万人も不足する」との見通しなどを紹介。長時間労働、低所得からドライバーの担い手は減る一方で、24年以降は「罰則付き時間外労働上限規定」の適用により「ドライバー不足は一層深刻化する」と指摘している。「限られた資源の有効活用と生産性向上」「あらたな労働力の確保」「実現のための組織形成・人材育成」の3つの視点に基づき、4つの具体的施策を提示し、注目されている。

    山内委員長に話をうかがった。

    ――物流を国家戦略として捉えるということだが。

    豊かで安心・安全を満たす「持続可能な社会」実現のためには「持続可能な物流」を実現しなければならないということが大前提となる。

    今まで物流事業者は荷主の要請に従うまま、過度な値下げ競争や無償の附帯作業など目先の競争による体力勝負をしてきた。しかし、物流機能が需要に追い付いていない今、物流の持続可能性を高めるには、わが国の経済成長、産業政策の観点から俯瞰した国家戦略として捉えるべき。戦略の策定や実行にあたっては業界団体だけで行うことは困難。国がイニシアチブを握っていくことが求められる。

    ――「自家用トラックによる有償運送のさらなる規制緩和」を提案しているが。

    引越輸送や宅配の一部で、中元や歳暮の繁忙期などに利用できるということで、ヤマト運輸でもそういう部分では活用させていただいている。

    ただ、それはある意味「限られた期間」であり「限られた領域」であるということ。

    トラックは、全体では782万台ぐらいあるが、営業用トラックはそのうち148万台で、634万台は自家用。

    この中にはミキサー車もあれば、建材を運ぶような色んな形の物があるので、一概に貨物輸送に使えるわけではない。

    われわれが試算したところ、自家用トラックのうち41万台程度が、今の(一般的な)貨物輸送に適する車両だろうということが分かった。

    労働人口が減り、ドライバー不足が叫ばれる中、どんどん貨物は小口化している。EC化、デジタル化が進めば、小口・多頻度化はこれからも進むだろう。自家用トラックも含めて、今あるものを活用すべきで、もちろん営業用トラックの活用も進めていく。

    これは「輸送の標準化」であったり、「共同化」などだが、一方で「自家用トラックがあるよね」と。積載率は、営業用が39.2で、自家用は26.9%。営業用に比べて自家用はまだ余裕がある。そこを生かせる形にしていきたい。大雑把に言うと「シェアリングエコノミー」の考え方だ。

    ただ、安心・安全の部分など、自家用が勝手にやり始めたら健全な運送業界ではなくなる。

    ――それで「実運送事業者の管理下」という縛りを付けた。

    物流が持続可能であるために「健全」でなければいけない。健全な物流を持続可能にしていくことが基本となる。

    労働時間問題や作業・荷役の安全性など実運送事業者(物流事業者)が一役買うことで、安心・安全を担保できる。

    ――「自家用トラック本業の輸送量を超過しない場合」も自家用トラック活用の条件にしているが。

    あくまで「副業的に」ということ。安全も守られず、安く運ぶというようなケースは容認するわけではない。

    ――かつては「営業用トラック」と「自家用トラック」は対立構造にあった。業界は「自家用から営業用へのシフト」を荷主業界に呼び掛けるなど全面に打ち出していた。

    せっかく(自家用トラックが)あるのだから、もっと全体としてうまくできるように持っていくべき。全体最適、社会全体で良い形にしていこうという考え方で、もう少し踏み込んで言うと、「持続可能な運送業、物流業」を作らないといけない所まで来ている。日々の生活や経済成長を支えるために、このまま輸送ニーズが増加し続けると、物流業界が対応し切れなくなる。諸外国のライドシェアのように個人等が色んな形で出てくると思う。すると「安心・安全」は根本から崩れかねない。中小トラック事業者を含めた「健全な物流業界」を守っていくためにも、自家用トラックの活用は重要となってくる。「あってはならない形」にならないように社会として構築していくことが必要というのが提言。

    だから、自家用といえども、国交省が監査に入る仕組みにする。

    ――「外国人トラックドライバーの解禁」で、運転だけでなく「荷扱いのスキルを身につけるための教育」や「運行管理システムの教育」も必要とのことだが、それらを理解させるには、日本語理解力が必要となるが。

    もちろん、一定程度の日本語力は必要だ。その上で、外国人の方がドライバーとして、きちんと働ける形になっていることが必要。「安いから」とか「コスト削減」のような、かつての考え方では失敗する。日本で必要なのだから、日本の労働力として、日本人と同等の待遇で迎える。場合によっては、「来てもらう」のだから、それ以上にケアするような、コストをかけてでも働いてもらうという考え方でないと成り立たない。

    そして、外国人ドライバーに働いてもらおうとすると、制度的なものを変えなければならない。トラックドライバーを「特定技能」の対象にしていただいて、日本で働ける環境づくりを進めたいというのが主旨。

    建設業は(特定技能に)入っているが、運送業は入っていない。私は、トラックドライバーは「技能職」と思っている。まず、運転技術がある、あとは荷扱いとか、積み付けとか、崩れないように養生するなど様々な技術がある。また、運行の安全管理技術。こうしたものもきちんと身につけないといけない訳で、やはり「技能職」。特定技能の中にきちんと入れていただいて、日本で長く働ける環境を作らねばならない。

    色んな技術を身につけてもらうことが必要だが、現在、それが標準化されていない。だから運送業界として、外国人の方にドライバー職をやってもらうには「こうしたことを身につけてもらう」「学んでもらう」というものを標準化することに向けて、業界として動き出さないといけない。それで「教育」という提言をした。

    ――日本人管理職の教育も必要と強調されているが。

    仕事の与え方などで、差別的な発言をするようなことがあってはならない。また「目でモノを言う」というやり方は、日本人には通じても外国人には伝わらない。それで管理者教育が必要と指摘した。(後編に続く)

     

    ◎関連リンク→ ヤマトホールディングス株式会社

     
     
     
     

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