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物流ニュース
日本式コールドチェーン物流サービス 国際規格で海外展開を支援
2025年5月30日
日本主導の企業間取引(BtoB)におけるコールドチェーン物流サービスに関する国際規格ISO31512が2024年12月に発行された。この規格は、日本の優れた物流サービスの展開により世界的な品質向上を目指すことを目的に制定され、コールドチェーン物流に関する需要が旺盛なアジア諸国を中心に普及を図ることによって、国内物流事業者の強力な海外展開への支援として期待されている。
ISO31512を発行した背景について、国交省は「アジア諸国では、冷蔵・冷凍食品の国内流通量が大幅に増加しているが、一部の国では温度管理が不十分な物流サービスが行われている状態だったため、高品質な日本式コールドチェーン物流の国際標準化を進めてきた」という。
物流分野のISO31512の普及促進に関する勉強会で座長を務めた森隆行氏(流通科学大学 名誉教授)は、「日本では問題なく冷凍冷蔵貨物が輸送保管されているが、海外では必ずしもそうではない」として、「日本の物流事業者が提供する高品質の物流サービスを国際標準化することで、競争力が強化され、地域経済の発展や食品の安全性向上にもつながる」としている。
「ISO31512が普及することで日本の事業者の海外展開に役立つことが期待できる」とし、期待できるポイントとして「1つ目は、アジア諸国のコールドチェ―ン物流サービスの質的向上により、物流事業者の海外展開や農林水産物や食品等の輸出を促進することが可能になる。2つ目は、現地の物流事業者に業務を委託する場合の選定基準になる。最後の3つ目は、海外での信頼の獲得により、日本の事業者の海外ビジネス拡大に寄与することが期待される」という。
ISO31512は、生産者である農場・漁場を除いて、コールドチェーンに携わる低温保管サービス、低温輸送サービスを提供する事業者が対象となる。
同規格の対象貨物は食品を想定。温度管理が必要な貨物としてほかにも医薬品や化粧品などが想定されるが、これらの貨物の低温保管や低温輸送は同規格の適用範囲外。また、輸送過程で通関に関する部分も適用範囲外となる。
貨物の保管や輸送の具体的な温度については規格のなかでは定められておらず、荷主との取り決めに基づくものとなっている。「ISO31512の要求内容」には、事業者の作業項目ごとに要求事項を記載。
同規格の取得方法について、第三者認証機関の日本海事協会は「物流の流れのなかで、コールドチェーンのチェーンが切れてしまうトラックに積み込む時、トラックから冷蔵倉庫に運び入れる時、そしてまたトラックに積み込む時などをオペレーションの面からチェックさせていただく」としている。
文書審査と実施審査の2つを用いて要求事項の適合性を見る。基本的な流れは、文書審査を行って、実施審査、中間審査を行う。
国交省物流・自動車局国際物流室は「規格取得はもちろん強制ではないが、荷主などから要求される場合もある」とし、また、温度管理輸送を行っている運送事業者のなかには「規格を取得しなければならなくなった場合、普段行っている作業で十分基準を満たしていたとしても、ISOの書類づくりや管理などで仕事量が増えてしまう」と危惧する声もある。関連記事
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