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    物流学部・学科で物流高度人材の育成を 人材流入のきっかけに

    2015年12月4日

     
     
     

     大手物流企業の採用担当が、就職志望者の大半が「事務職」や「安定している職種」に応募し、「物流業に携わりたい」「ドライバーになりたい」という人はごくわずかだと嘆いている。社会全体の物流業界への関心が低く、社会インフラとしての重要性が理解されていないといえるが、2020年の東京オリンピック・パラリンピック招致を控え、活気を見せる観光業よりも、実際は物流業のポテンシャルの方が極めて高い。大市場を支える若く有望な人材を物流業界に呼び込むために、大学での物流学部・学科など、高等教育機関での人材育成が一つの方策として考えられる。
     国交省の調べによると、2012年度の運輸業界の営業収入総額は約34兆円。うち物流業界は約24兆円を占める。これは日本のGDP総額約473兆円の約5%に当たり、他産業と比較すると旅客業(約10兆円)の2.4倍、旅行業(約6兆円)の4倍にのぼる。
     かつて、ホテルや旅館は現在の物流業のように就職先として選ばれにくい職業だった。ところが、ここ数十年の観光需要の高まりから重要性が見直され、旧運輸省の観光政策審議会の「今後の観光政策の基本的な方向について」(諮問第35号平成6年5月24日)に対する答申第39号(平成7年6月2日)で、「観光産業は21世紀の経済をけん引する基幹産業であり、国内雇用を新しく創出する」とされ、初めて国として観光大学などの高等教育研究機関の設立と観光学の振興の必要性が示された。この答申の3年後の1998年に、立教大学ではじめて観光学部が開設されている。


     物流業も今般、同じ流れに乗っているようにみえる。国交省の平成28年度予算概算要求では、物流高度人材の育成方策として、サプライチェーンのグローバル化に対応した、高度化・国際化する日本の物流システムを支える専門知識を持った人材を育成するための環境整備にむけて検討することが新たに盛り込まれた。その一つの方策として、物流関係学科・コースの充実やモデルカリキュラム作成に向けた、産官学連携による検討を行うという。欧米などの諸外国の物流企業に比べ、荷主に対する提案力の強化が課題とされており、アメリカや中国の学生が物流を学問として体系立てて学んでいるのに対し、日本では就職してから学び始める者が大半で、習熟度の差が交渉力に現れているという。国交省はこれらを根拠に検討を進める方針だが、これは新たな人材獲得に向けた、物流業界への入り口としての効果も期待される。
     物流連(工藤泰三会長)では、平成7年から大学寄付講座を開講している。トラック運送業、倉庫業、内・外航海運業、航空業それぞれの輸送モードから企業の社長や部長を講師に招き、年間で13講座実施している。これまでの実施大学は慶応大学、早稲田大学、専修大学、横浜国立大学、関西大学、一橋大学、首都大学東京、青山学院大学で、過去20年間8大学で48講座を開講し、受講者は約1万1000人にものぼる。物流連によれば、「受け入れ学校や教授の反応は良いものの、物流学部・学科創設の話は出たことがない。手ごたえはあるが、自ら学部・学科の立ち上げに力を注ごうというところまではまだ行き着いていない」という。
     ほかにも、設立の費用、物流を学んだ学生を確実に業界に取り込むためのスキームづくりなど課題は山積している。これらを本気で実現したいのであれば、物流業界や行政、社会の要請など大学側を動かす大きな力が働かなければ難しい。
     「物流連で開催するセミナーの参加者は、あくまで〝物流企業への就職〟を考えているのであり、ドライバーになろうと思っている人はほとんどいない」という。業界が一番欲しているドライバーの人材を確保するためには、これと同時に、小・中学生を対象とした物流施設見学を行うなど、より若い世代への働きかけが必要だ。

     
     
     
     

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