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    自動走行の実現へ トラック業界への影響は

    2015年11月30日

     
     
     

     自動車の自動走行が現実味を帯びてきた。9月16、17の両日、G7の交通大臣による会合がドイツで開かれ、今後の自動運転発展への支持を表明するとともに、国際的な協力により実現すべきものという基本認識を共有した。現在の国際ルールでは、運転者は車両の操縦義務があり、自動運転の実現にあたっては運転者の制御下にあることが必須条件となっている。日本政府は、完全自動走行を視野に、2020年をめどに世界最先端のITSを活用した自動走行システムの構築を目指しており、人口減少・少子高齢化の中、物流業界においても人材確保を補うものとして、技術革新が期待される。
     ドイツのフランクフルトで行われた第1回G7交通大臣会合で、自動車の自動運転が、「運転者のミスに起因する事故の防止」「渋滞の解消・緩和による経済損失の低減」「環境の改善」「高齢者等の移動の自由向上」に貢献するものであるとされた。
     具体的には、自動運転により運転負荷が軽減されることで、長距離の移動でも疲労が少なくなり、近年増加傾向にある高齢者の自動車運転中の交通事故死者数や、高速道路上における逆走事案など、顕在化した高齢者特有の交通問題の解決にも効力を発揮する。


     また、自動運転によって不要な加減速の低減、空気抵抗の低減、渋滞の抑制などで、燃費の向上や二酸化炭素排出量の削減効果も期待される。
     日本の二酸化炭素排出量の約2割とされる運輸部門からの排出量のうち、87.8%(日本全体の16.3%)が自動車からの排出である。そうなればトラックの環境に与える負のイメージを払拭できるかもしれない。
     液化天然ガス(LNG)車は、無充填で1000km以上もの長距離走行を可能としていることから、期待が集まっている。これについて国土交通省の藤井直樹自動車局長は「液体から気体にする装置を車に搭載するための開発も一部で始まっている。水素であれば元は水なので、そういう意味では、トラックの排ガスが環境に影響があるので郊外に誘導しようという話はなくなってくるだろうと思う。そこはどんどん変えていくべきだ」と話している。
     また、平成26年6月30日に閣議決定された「『日本再興戦略改訂』2015―未来への投資・生産性革命―」の「改革2020」プロジェクトでは、ドライバー不足、省エネ、CO2削減に貢献するものとして、高速道路などで前方の車両を自動で追尾するトラックの隊列走行が、今後の検討課題として取り上げられている。
    経産省の平成28年度予算概算要求では「スマートモビリティシステム研究開発・実証事業」(新規)として、運輸部門の省エネ推進やドライバー不足解消のため、複数台のトラックによる隊列走行などの高度な自動走行システムの社会実験にむけて、識別能力の高い革新的なセンサーなどの研究開発を進めるとともに、公道を含む実証実験を通じて事業環境などを整備するとしている(要求額20.0億円)。
     また、平成27年6月30日に閣議決定された「官民ITS構想・ロードマップ2015~世界一安全で円滑な道路交通社会構築に向けた自動走行システムと交通データ利活用に係る戦略~」では、自動車の運転への関与度合いの観点から、自動運転の概念が定義されている。
     ドライバーへの注意喚起などを行う〝情報提供型〟および加速・操舵・制動のうち、いずれかの動作をシステムが行う【レベル1】を「安全運転システム」、加速・操舵・制動のうち、複数の操作を一度にシステムが行う状態の【レベル2】、これらすべてをシステムが行い、なおかつシステムが要請したときのみドライバーが対応する状態の【レベル3】を合わせて「準自動走行システム」とした。【レベル4】の「完全自動走行システム」は、緊急時を含むあらゆる状況において、加速・操舵・制動をすべてシステムが行い、ドライバーは全く関与しない。
     いずれのレベルでもドライバーはいつでもシステム制御に介入することができるが、ドライバーが最終責任を持つ「準自動走行」と「完全自動走行」では特に制度の面で大きな断絶があることがわかる。現行制度下では、自動運転の実現にあたって運転者の制御下にあることが必要条件であり、当面は「準自動走行システム」が現実的だ。
     1949年のジュネーブ道路交通条約、1969年のウィーン道路交通条約で、「運転者は車両の操縦を行わなければならない」とされ国際ルールになっているように、日本の道路交通法第70条では「車両の運転者は、常に車両の速度を制御していなければならず、また、適切かつ慎重な方法で運転しなければならない」との規定がある。まずはこれに沿った形、つまり、ドライバーの運転をアシストするイメージでの実現となる。
     政府目標では、完全自動走行を実現できる技術を目指しつつ、「準自動走行システム」については海外への展開も視野に入れながら、2020年までに世界最先端のITSを構築し、例えば自動走行システムによって、安全運転を着実に行う熟練ドライバー以上の安全走行の確保や、最適なルート判断・速度パターンの設定などの実現で、交通渋滞の緩和、交通事故の軽減、高齢者の移動支援などを達成したいとしている。
     来年9月24、25の両日、日本が議長国として開催するG7長野県・軽井沢交通大臣会合では、「自動車および道路に関する最新技術の開発・普及」のテーマのもと、前回会合の議論をさらに深めるとともに、ITSや燃料電池自動車などの次世代自動車まで範囲を広げて議論を進めていく。

     
     
     
     

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