-
物流ニュース
採用率向上のポイント ターゲット絞り効果的に
2019年2月18日
厚労省が発表した2018年平均の有効求人倍率は1.61倍で前年比0.11ポイント増となり、1973年の1.76倍以来45年ぶりの高い水準となった。様々な業界で人手不足が深刻な状況となるなか、人手不足による収益悪化で倒産する「人手不足倒産」も増えている。昨年1月時点のドライバーの求人倍率は2.76倍で、全職種平均1.52と比較しても厳しい状況。トラックドライバーの高齢化が進む運送業界でも、世代交代が急がれる。求職者数が最も増えるこの時期に改めて、どのようにすれば人材を獲得することができるのかを考えてみる。
一昔前までトラックドライバーは、乗れるだけ乗って、とにかくお金を稼ぎたいという人が集まった。だが、今の若い世代は、お金はそんなに要らないが、家族や友達、プライベートの時間を大事にしたいと考えている人が多い。さらに、若い人には免許を持っていない人が多く、企業も5年、10年前と同じようなやり方で人を採用するのは難しくなる。
リクルートトップパートナーのトラコム(坂本秀美社長、東京都港区)の営業一部の植弘泉秀リーダーは「ドライバーや建設などの仕事は以前、高収入のイメージがあったが、10年ほど前からあまり給料が変わっていない」とし、「若手を採用する場合、免許の取得支援はもとより、休日や仕事内容がポイントとなってくる」と話す。
また、営業一部総合企画の小林浩之アカウントリーダーは「求職者は自分の能力や仕事量と給料のバランスを見て、働く会社を判断する」とし、「募集時にきれいごとばかりをいう会社は、例え多くの応募があって採用できても、内容とのギャップに気付いた人は定着しない」と指摘。
リクルートの求人サイト「はたらいく」には「せきらら求人」という項目がある。「ここはあなたに保証します。ここは覚悟してください」と、正直に会社のことを伝える項目で、多くの求職者が求めている情報が載っている。同社では「応募数を増やすのは難しいので、採用の確率を高めることが重要」とし、「企業目線では、抱える人員が多くなり、コストが膨らむので受け入れにくいかもしれないが、求職者目線では、自分に合った働き方が選べるように、企業に仕事の分解を提案している」としている。
応募者の利用メディアは、折り込みからネットに変わってきている。全求協求人広告掲載件数等集計結果(18年3月分)によると、折り込み求人件数は約6%減少、一方でengage(エンゲージ)やindeedなどの求人サイト件数は、約9%増加している。自社Webサイトやユーチューブなども、人材獲得のためのツールとして利用する企業が増えている。
企業のWeb制作を手掛け、Webでの採用関係に詳しい秋元運輸倉庫(秋元伸介社長、同)の坂田良平マネージャーは「採用広告を出すにあたって、自社の『チャームポイント』のピックアップ、自社Webサイトに採用コンテンツを用意、24時間体制で受付を可能にする、毎日最低1時間を採用活動にあてることのできる担当者を用意することが必要」という。なかでも、自社の「チャームポイント」のピックアップは重要で、好感を与える会社、つまり魅力のある会社でなければ人を集めることは難しい。市場に応じた採用コストは必要で、「ひとつの方法」「過去の成功例」にとらわれず、自由なチャレンジも必要。採用活動で掛けた手間とチャレンジは、長期的に見れば結果を裏切らないとしている。
また、会社のカラーや得意分野、特化しているものなど、どのような仕事をしている会社であるのかも、求職者にはしっかりと伝える必要がある。トラックドライバーであっても、一般貨物と軽貨物では、PRするポイントもターゲットも変わってくる。
軽貨物運送業をメインに、利用運送業、業務請負業などを行っているKsBOX(同東村山市)の神田飛社長は「どんなに多くの人を採用することができても、定着してもらえなければ意味がない」とし、「応募数が減っても、ターゲットを絞った採用活動を行って、KsBOXの仕事なら自分が活躍できると思う人に来てもらいたい」としている。同社では実際に、応募数は多い方ではないが、ターゲットを絞りこんでいるため採用率は高く、定着率も高い。
運送事業や倉庫事業、コンビニエンスストア事業、飲食店事業などを行っているアスロード物流(神奈川県横浜市)の安田浩社長は、「人を獲得するためには、会社を好きになってもらうことが重要」としたうえで、「会社の方針やカラー、仕事内容などを伝えて、その反応を直接見るため、面接は現在、全ての人を私が対応している」とした。
会社を好きになってもらえるかどうかは、仕事内容や環境が合うかどうかのほかに、どれだけコミュニケーションが取れるかということも重要。仮に応募がどんなにあっても、定着しなければ人手不足の解決にはならない。
採用活動で重要なことは、会社や会社の業務を好きになってくれる人で、定着してもらえる人を採用することだ。そのためには、ターゲットを絞って、効果的にPRを行う必要がある。会社の規模はもとより、一般貨物と軽貨物でも、ターゲットや戦略は違ってくる。
いつまでもポイントのずれた採用活動を行っていては、採用できる人材も獲得することはできない。
この記事へのコメント
関連記事
-
-
-
-
「物流ニュース」の 月別記事一覧
-
「物流ニュース」の新着記事
-
物流メルマガ