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    運送契約の書面化 口約束で不明確な商慣行改善へ

    2020年1月27日

     
     
     

     契約の締結は書面がなくとも成立し、電話などによる口約束だけで法的拘束力が生じる。トラック運送業では、取引契約の書面化がされていない場合が多く、運賃や支払い期日、支払い方法などが不明確で問題のある商慣行となっている。しかし、契約書が無い状況で問題が発生した場合、トラック運送事業者が責任を取らされることが多くなる。こうした状況を改善するため、国交省は2014年4月1日に運送契約の書面化を施行。それ以降、運送契約の書面化を推進してきたが、運送会社間での書面化が進んでいない事業者は少なくない。

     国交省では、運送契約の書面化を進めるため、「トラック運送業における書面化推進ガイドライン」を発出している。ガイドラインでは、運送契約に際して、「運送日時」「付帯業務の内容」「運賃・料金の額」等の必要事項について書面で共有することをルール化している。

     2017年11月には、標準貨物自動車運送約款が改正され、「運賃」と「料金」の区別を明確化したほか、新たに「待機時間料」を規定。さらに 附帯業務の内容をより明確化した。このようにトラック運送における運賃・料金の収受ルールが変わったことで「トラック運送業における書面化推進ガイドライン」も一部改正された。

     こうしたガイドラインの効果もあって、メーカーなど運送委託者(荷主)との運送契約の書面化は一定の成果を出している。だが、「そもそも取引する上で契約書がなければ、荷主の方が不安になるのでは」と、一般貨物をはじめ、精密機械やイベント関連の輸送を行っているZEST(=ゼスト、福島県本宮市)の佐藤大輔社長は当然のこととして、取引先とは書面で契約を交わしている。

     「弊社が下請けの場合でも、取引をする時は必ず、弊社の方から先に契約書を出すようにしているが、これまでに拒否されたことはない」とし、「ちゃんとしている取引先だと、当たり前のように初めから契約書を出してくる」という。また、「継続的な仕事とスポット的な仕事の場合はそれぞれ、正式な契約書と取引確認書といった違いはあるが、必ず書面で契約を交わしている」としている。

     だが、「運送会社からの仕事しかしていないところは、書面での契約を交わしていないところがあると思う」とし、「弊社も創業した頃は運送会社からの仕事が多く、ほとんどが口約束だったが、徐々に書面化してもらった」としており、「書面化を拒否したり、難色を示す会社があるとは思えない」と、同社では運送契約の書面化は当たり前のこととして行っている。

     国際トランスサービス(早野由晃社長、東京都文京区)では基本的に、仕事を受ける段階で、荷主との間に約款を定めて明文化している。早野社長は「現在では荷主企業も、最初の段階で様々な約束事をまとめた契約を結びたいという企業が見られる状況にある」と分析し、同社ではこうした状況を踏まえ書面化に対応可能な体制を構築している。

     また同社は極力、仲介業者が少ない形での業務受託を目指しており、書面契約に対応可能な体制が、仲介を極力挟まない仕事を生み出しているという。同社長は、「運送企業の中には、ある程度の仲介企業を挟み、面倒な契約を任せてしまおうという所もあるかもしれないが、それでは直荷主の仕事は探しにくいのでは」としている。

     アパレル・ファッションなどの物流を総合的にサポートしているOTS(田中優一郎社長、同江戸川区)では、配送依頼を行う上で、基本となる書面契約を結び、それに基づいた取引を行っている。田中社長は「大手路線会社などへ、タリフ運賃で依頼しているケースとは別に、チャーターで依頼するケースもある」と話す。

     チャーターの場合は、最初に基本契約を交わし書面化。依頼先の営業担当者などとのやり取りの中で調整が行われる部分はあるものの、基本契約の中で大きさ・距離に加え、ハンガー車の使用に伴う荷役時間増などに応じた料金体系を明記し、それを参考にした取引を行っている。現在は作業時間をそれぞれ計測し、時間に応じた料金設定を構想しているという。田中社長は「良い配送・物流のためには適正な料金・条件が不可欠。そのためにも条件を整え、お互いが働きやすい環境を作っていく必要がある」と話している。

     運送事業者を対象に「デジタル化」を進めているTSUNAGUTE(東京都千代田区)の春木屋悠人社長は、「デジタル化を進めることで書面化につなげることは可能」と指摘する。「規模の小さい中小・零細の運送事業者が単独で、デジタル化や書面化を進めることは非常に困難で、元請けや荷主と協力して進めて行く必要がある。まずは業界をあげて、デジタル化・書面化の流れを作っていかなければいけない。例えば、デジタル化にしてもトップがその必要性を認識していても、まだまだ現場とのギャップがある場合がある」という。

     「仕事のやり方を変えようとするには抵抗もあるだろう。また、書面化といっても紙で残す場合もあるが、電子媒体で残すことも可能だ。いろいろ仕組みがあるので、必ずしも紙に印刷し署名して、郵送しなくてはいけないということではない」という春木屋社長。「電子契約の何がいいかというと、まず印刷しなくて済み、郵送する必要もなく、メールだけで済む。これは法律でも認められていて、収入印紙を張らなくて済むなどのメリットもある。この分野は国もどんどん規制緩和しているので、活用するといい部分がたくさんある」という。

     「帳簿類などをダンボールに入れて一定期間保管するということもしなくて済むし、倉庫を借りて保管する必要もなくなる。こういった仕組みはいろいろ出てきてはいるが、普及していないのが現状」と同社長。「普及の壁になっているのが、現場として『いままで通りでいい』という意識が強く残っていること。高齢化も進んでおり、『自分の時代はこれでいい』という考え方が多いようだ。もう一つは、だれかが最初に始めなければいけないが、先陣を切ってスタートさせる人と、二歩三歩下がって先人を見てから進めようという人がおり、圧倒的に後者が多いというのも理由」と説明する。

     
     
     
     

    この記事へのコメント

     
    1. 牛魔王 says:

      この業界くらいじゃない?後から料金決まるの。
      普通、「この商品はいくらです」ってお互い分かって売買するのに、
      トラック運送は、走ってるときにこの仕事がいくらか分かってなくてもおかしくない。
      20年配車やってるけど、完全に麻痺してると思う。

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