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「ラブレター効果」で銀行から融資引き出し
2010年7月16日
資金繰りに頭を悩ませる事業者は少なくない。企業再生コンサルタントのS氏は三十数年の銀行勤務を生かして6年前、コンサル業を開始した。再生企業数は130社以上に及ぶが、銀行との付き合い方についてアドバイスを行っている。「企業について銀行がすべてわかっていると勘違いしているところが多い。融資を引き出すには銀行がお金を貸したい姿に会社を変えていくことが大切」と強調する。
S氏によると銀行員は2、3年の周期で転勤となり、引き継ぎ業務は3日程度で顧客回りは20─30件に過ぎない。新たに着任した銀行員は顧客先の情報を知らないケースが大半だという。また、支店長クラスでも重要な権限は持っておらず、本部決済がないと融資も実行できない。つまり、顧客と直接付き合いのない本部といかにパイプを持つかが大きな意味を持ってくるという。
「本部とパイプを持つには自社の内容を知らせるために毎月、『ラブレター』(事業報告書)を銀行に届けるのが効果的だ」という。A4の紙に会社の強み(自慢話)など、決算書に表れないことを列挙することを勧める。紙には日付と銀行名を書き、ゴム印を押して銀行の書式にすることが肝要で、この書式で銀行側はファイリングし、書類扱いにしてくれる。「ラブレター」は本部にも送られ、引き継ぎの担当者の目にも入るようだ。
また、銀行が欲しがる資料としては試算表、資金繰り表、取引銀行一覧表の3点セットを挙げ、「本部も現場も本当にその会社を知っているからお金を貸せる。毎月の資金繰り表がわかれば、銀行としてお金の要るときと要らないときがわかる」とし、銀行への情報提供の重要性を強調している。
さらに、「業績が悪くても事業計画書を作成することで銀行の見方を変えることも可能」とも話す。5か年の事業計画書の作成を薦め、「今の業績は悪いが5年経てばこんないい会社に戻る、という姿勢を表すことが大事。大不況に船出するのは海図が必要。どこの港に着きたいかを示せば銀行の見方は変わる」と強調する。
1年目は毎月の損益計算書の予想、2─5年目は年間で計画を立てる。売り上げ目標だけでなく、経費の予算も記すことが大切だという。
S氏は「銀行はお金を貸せる資料を欲しがっているが、赤字の会社には絶対に貸さない。経費や減価償却を抑えるなど、多少の『化粧』は必要。お金の支払いを経理に任せっきりにするのではなく、経営者は最後の利益を出すのが仕事」と指摘する。(大塚 仁)
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