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100円引っ越し実態解明へ 専業者から批判相次ぐ
2011年2月10日
「100円引っ越し」 がインターネットで話題になっている。ITベンチャー企業が昨秋から事業を開始。一般ユーザーを運送事業者に紹介するとともに、ユーザーが引っ越し先に「NTTフレッツ光」のネット回線を開通することを条件に?移動距離20キロ以内?2トン未満の荷物量?作業員は二人まで──の引っ越しなら、すべて100円で提供するというもの。国交省には引越専業者から「破格の値段で市場、消費者を混乱させる」「取扱事業なら違法ではないのか」との声が相次いでいるため、実態解明に向け調査を開始した。
「100円で引っ越しができる」――。信じられないが本当で、テレビでも紹介された。仕掛けたITベンチャーはブロード・メディア(東京都渋谷区)という会社で、全額出資の子会社が「100円引越ドットコム」というサイトを運営する。ユーザーが引っ越し先で申し込むインターネット回線など同社で受け付け、その販売手数料を原資としてユーザーに還元することで「100円引っ越し」が可能となる。例えば2万円の引っ越しなら、まず作業完了の時点でユーザーは運送事業者に正規の金額2万円を支払う。その後、指定のネット回線が開通したことを確認後、ブロード・メディアからユーザーに直接差額(1万9900円)が支払われるという仕組みだ。
サイトを利用する運送事業者は、同社に紹介手数料を支払う必要がある。手数料は「成約金額の10%」で、「近距離・単身者」のケースで「閑散期平日実施、通常2万円の場合は2000円」「繁忙期土日実施、通常4万円の場合は4000円」などと細かく規定している。ブロード・メディアでは「仕組み上、見積もりではなくほぼ99%の割合で仕事の依頼。見積もりにかかる時間や経費も減少する」と説明。3万5000円の引っ越しなら依頼100件の場合、運送事業者は紹介料35万円を支払っても「売り上げ350万円が確保できる」と強調する。
「100円引っ越し」の第1号、アップル引越センター(横浜市港北区)は昨年9月の開始以来、「アップル単身パック」として400件を超す実績を上げているという。指定のネット回線開通を条件とした「100円引っ越し」はまだ関東エリア中心だが、全国の通信事業者が「販売促進策」として注目する。
こうした状況に周辺の引越専業者らは、「消費者に誤解を与え、市場を混乱させる。3月のシーズンを前に心配だ」などと批判。国交省貨物課には「取扱事業者ではない通信事業会社が、こうしたことをするのは違法ではないのか」との問い合わせも相次ぎ、関運局に調査を指示した。
国交省は「『取次ぎ』ならすでに自由化されたので問題はないが、『取扱い』なら違法となる。事故が発生した場合など消費者保護の観点や責任の所在、また個別の契約実態も含めて調査を進める」方針。
ブロード・メディアの担当者は「全く問題はないはず。イーモバイルの100円パソコンと同じで、インセンティブを引っ越しに充てているだけ」と話している。
ユーザーと運送会社にそれぞれ「契約」関係があるなど複雑な実態があり、「法に抵触するかどうかは、専門家も加えて論議しなければ決着は困難だろう」との見方もある。(土居忠幸)
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