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    ダントツの質で評価を得る 「サービス向上でトラック不要」

    2011年6月1日

     
     
     

     一度雇えば整理解雇がほとんど不可能という、最高裁判例による「整理解雇の四要件」問題が、東日本大震災という未曾有の災害の土地でも居座っている(物流ウィークリー4月25日号など)。厳しい経営環境下にある運送経営者らは、「労働法制が『労働者の味方』を標榜し、その法律を執行する厚生労働省の組織があり、そこからネタをもらっている記者クラブが日本人の情報環境を握っている以上、整理解雇は会社側の一方的悪徳であり続ける」といった、あきらめにも似た感覚を共有している。しかし、ここに紹介する2人はいまの労働法制を逆手に取る、もしくは利用する方向で健闘している社長たちだ。



     家電量販店で購入された電化製品の宅配事業者。テレビの買い替え需要などの駆け込みもあることから「いますぐ実行はできないが」と前置きして、事業計画を語る。

     物流は、社会インフラとして必要だが、トラックを自分の会社がサービスの一環として保有する必要があるだろうか。そう考えると、トラックの保有にかかる経費ばかりが過大に思えてくる。燃料代だって、この時期はバカにならない圧迫要因だ。

     兵庫県東部にある、この事業者は数年前に、いまの会社を設立するまで、現在の荷主にあたる量販店とはライバル関係にある別の量販店の物流センターに勤務していた。「絶対に見返してやる」と辞表を叩きつけ、物流センターに関しては反面教師的な性格を持つ量販店だった。

     そこから学んだ経営のキーワードは、「ダントツの質」。他の追随を許さない圧倒的なものがあれば、楽しく仕事が続けられる。経営者は、「自分もセンターで人を使っていた立場。『この業者がいい』というよりも、『この人がいい』という評価が最も強い」。ただ、個人の能力にばかり依存せず、社内の質を上位で均質化しておくことは必要だとも認識する。

     経営者は、「人間の質を最高レベルにまで引き上げられれば、トラックがなくても横乗りや人材派遣として十分やっていける」。家電宅配はツーマン運行が主流だからこその発想でもある。ハンドルはトラックの保有会社に、横乗りで実質上のリーダーは自社社員で、という形だ。

     今春、同社にうれしい知らせが来た。荷主の量販店からダントツの質が認められた。客宅での付属物品の販売実績や、アンケートハガキの結果、そして物流センター職員への接遇など、あらゆるサービスの質が見込まれ、表彰を受けた。経営者は、「安定的雇用はウチの根幹。ダントツさえ意識していれば、雇用リスクなんていまはほとんど考えない」と話している。

     同じ兵庫県でも、こちらは中部にある運送会社。食品スーパーからの物流を一手に任されるなど、総合物流業を意識した展開を進めてきた。「うまいもの便」の名称に代表される、スーパーのネット直販部門の物流代行業務(ラベル貼りなど出荷業務全般)も引き受けている。

     経営者は、「雇用リスクがあるから頑張れる」とあっさり話す。次々に新しい手を打ち、立ち止まらない。トラックはできるだけ持たない主義。今夏、整備事業なども始める予定だ。「従業員は皆、しっかりと応えてくれる。次の一手がないと路頭に迷わせかねない時代」。雇用リスクを次の一手に活用している感じすらある。(西口訓生)

     
     
     
     
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