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リスクの大きい1社依存 荷主の規模縮小で経営破綻
2011年6月7日
奈良県の運送会社が3月下旬に経営破たんした。負債額は約1億4000万円。関係者によると、同社はプラスチック製品の輸送を中心に事業展開し、6年前に現在の営業所の土地を購入し移転したが、不動産購入費用の返済が重荷となり、さらに得意先の規模縮小で仕事を失うことになり、先行きの見通しが立たないことから事業を停止、裁判所に自己破産を申請した。周囲の事業者の話では、得意先1社への依存が響いたという声が聞かれるが、リスク回避のため得意先を分散させるのは先行き不透明な現状では鉄則のようだ。
同社は安全性優良事業所(Gマーク)の認定を受けていたが、有効期間は来年の12月末までの4年間であった。4年という有効期間は、2回更新しないと認定されない一番評価の高いもの。近畿運輸局優良事業者表彰も受け、社長がト協の理事を務めていたこともあり、今回の経営破たんについて「あれだけきっちりしていた会社がなぜ」と、周りの事業者の動揺は少なくない。元々、借地で事業を行っていたが、6年前に本社不動産を購入し、倉庫も構えた。地元メーカーのプラスチック製品をホームセンターへ納入する仕事を行っていたが、燃料価格高騰で得意先の製品コストが跳ね上がり、ここ数年は安価な中国製品に押されて規模縮小を余儀なくされ、それに伴い減車傾向にあったようだ。
同社を知る運送会社によると、「昔は大手家電メーカーの仕事など複数の荷主の荷物を積極的に扱っていたようだが、最近は元気がなく、最後は5台を割り込んでいたのでは」と話す。「結果的に、得意先を1社に依存しすぎていたのが響いてしまった」とは周囲の事業者の一致した声である。「荷物に合わせて4トン幅広ロングの車が主体で、積載面から他の荷物が扱いにくかったのもマイナスに響いた」との声も聞かれる。
経営破たんした事業者と親交があったという運送会社は、15年前に会社を設立し、現在は20台を抱えるが、「うちも創業当時は1社に依存していたが、他の得意先を増やしていった。1社への依存率が高くなったら新規開拓は必要。1社に依存するのは経営的に楽だが先を見たら怖い。ウチの創業当時のお客さんは、今は存在しない」と話す。
また、得意先の数を3年前の3倍にあたる60社に増やし、車両30台を保有する運送会社社長は、「3年前は営業をかけまくったが、選り好みして仕事は増えてこない。良い仕事も悪い仕事も実際にやってみる。やっていく上で、どうしても従業員がついていけない、採算が合わないものについては徐々に削っていっている」と話し、先入観を持たない営業力の必要性を訴える。(大塚 仁)
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