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北海道、人口減少の中での物流経営 経営者の取り組みは
2011年6月27日
人口が減少し、道内の経済が縮んでいく中、運送会社の経営者は、これまでの成長市場とは全く違った経営が必要となる。国交省の国土審議会長期展望委員会が2月に発表した「国土の長期展望」の中間取りまとめ案によると、「2050年の北海道は人口が319万人と現在より250万人近くも減少し、52%の地域が無人地化する」としている。40年後の北海道は、「4割以上の人口が減り、今と比べ半分以上の地域に人が住んでいない」状態となる見込みだ。長期的に見て事業者の統合や淘汰、車両の減少は絶対に避けられない情勢といえる。人口減少や過疎化が加速していく中、運送会社の経営者は、どのような取り組みを考えているのだろうか。
道内の中堅運送会社は「本州への事業拡大に賭けている」と話す。「地元が大事なのは当然だが、長期的に見て、道内のみで物流の仕事が増えていくことはない」と断言。北海道―本州間の輸送を手掛けていた既存荷主の東北地方の生産施設に隣接して、数年前に拠点を構えた。「はじめは手探りだったが進出して良かった。道内の輸送、北海道―本州間の輸送はいずれも落ちているが、本州のみの運行は増えている。会社の将来は、本州での業務をいかに増やしていくかにかかっている」と捉えている。札幌市に本社を構える取扱事業者も同様に「道外から道内への荷物を扱うことが多く、道内のみの扱いはほとんどない。元請けも道外の物流企業ばかりで、あまり北海道にお金が落ちない」と嘆いており、「求車・求荷情報を見ても、北海道の情報は圧倒的に少ない。電話1本で仕事が出来るので札幌にいるが、実運送をやっていたなら北海道には住んでいないと思う」と語る。
同市の物流システム企業は、地元での展開を放棄し、事業開始当初から東京を中心に、ほぼ本州でしか営業を行っていない。「市場が小さいことと、システム導入に関する需要が低いこと」から、本州での展開を選択した。営業担当者は毎月、東京に長期出張しながら配送・業務管理システムの拡販を行っており、この数年は運送大手、軽貨物中堅、大手電機メーカーの物流センターなどに導入が決まり、堅調な実績を挙げている。同社は「北海道だけではなく、日本の市場が縮小する」ため、システムを現地化させ、海外への展開に着手しつつある。
一方、同市の3PL事業者は、「道内のみの事業を今後も続ける。競争が激しい首都圏に進出しても全く強みがない。北海道はまだ面白い市場」と話す。交通アクセスに優れた好立地に物流拠点を保有し、小売りの在庫管理、センター業務から全道の店舗への配送まで担っている。
「立地、物流品質とも同業他社に負けているとは思わない。市場が縮んでも物流がなくなることはないので、他の3PLの仕事を安売りせずに取っていきたい。勝ち残れば、より強い北海道の3PL企業となれる」と考えている。
縮小する市場にあって、中小運送会社1社のみでは体力に限界がある。同市にある一般社団法人全日本運送業支援協会(ALM、中野幸一理事長)は、中小運送事業者が活性化するためのモデルを北海道から確立・発信しようとしている。これまで適正な事業運営や活性化のヒントとなるセミナーを開催してきたが、今後は、物流受託の営業代行やラップトラック事業、独自の格付け制度、ドライバーの養成やライセンス発行などの事業も検討している。
優良な地元事業者が同協会を通じて交流・連携することで、「中小事業者でも適正な価格で仕事を受け、収益を上げ、事業を活性化させ、従業員に十分還元できる受け皿」となるよう目指している。(玉島雅基)
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