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    荷主への提案

    2011年8月26日

     
     
     

     サービスやアイデアで他社との差別化を図ろうとする事業者達。なかでも荷主との付き合いに力を注ぐ者も少なくない。今回は各事業者の考える「荷主への提案」を聞いた。


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    製品を改良し効率化 荷主とチームになる

     鈴三興業(鈴木浩之社長、神奈川県横浜市)は運送事業者でありながら、輸送部門、製造部門、設計開発部門という三つの部門を持つ。荷主への提案力について、「お客様のチームの一員になれるかどうか」と話す鈴木社長。「チームとして一緒にやる感覚が大切」という同社の特徴が三つの部門に表れている。

     製造と設計開発の部門を持っているのには理由がある。同社が主に扱っているのは住宅メーカーの製品。「運んでいるだけではだめだ」という発想から、様々な付加価値を提案して製造と設計にまで踏み込んでいった。

     荷主の求めるものは物流コストの削減だが、単なる価格競争であれば運賃値下げにしかならない。

     住宅メーカーの製品は輸送しにくい形のため空間が多く、荷姿が悪すぎる状況だった。これを見直すため、物流効率化も視野に入れた製造、設計に取り組んでいった。

     物流を考慮せず設計された製品は、空間が多く非効率だったが、設計から見直すことで、トラック2台必要だった製品が、1台で運べるようになった。

     こうした改善策を荷主と同じ目線でチームとして取り組んでいくのが同社の提案だ。製品の改良、業務改善による効率化のため単なる価格競争には飲み込まれない。運送事業者として考えれば、トラックが減れば同社の売り上げは減るが、荷主にとってはコストダウンになる。ただし1台あたりの運賃は高くなるので、運送事業者側も利益率は上がる。

     鈴木社長は「同じ製品を、安い運賃で2台を走らせるか、適正運賃で1台を走らせるかという問題」と指摘する。(千葉由之)

    人材派遣で経費削減 信頼される事業者に

     運賃単価だけで闇雲に企業の選択をされないよう、大阪府の運送会社社長は「荷主の工場に自社の従業員を派遣し、荷主の人件費削減を提案してきたことで、今では原料の受発注から車両の手配など全て任されている」と、信頼を得ている。

     同社は、もともと配送業務だけを任されていたが、輸送の効率化を図るため車両の配車業務を自社で行うように提案したことがきっかけで「荷主の工場に従業員を派遣することで荷主側の人件費削減に大きくつながった」という。

     同社長は「提案当初は、工場作業と配車業務を両立するのが大変だったが、そのおかげで今の信頼関係がある」と振り返り、「現状に満足せず、荷主側と当社の効率化を進めていくことで他社が参入できない環境を築ける。これからも様々な提案をしていきたい」と意気込む。

     一方、別の運送会社社長は「景気低迷で在庫を抱えなくなった荷主が、繁忙期だけ仕事の依頼をしてくる」ことに憤りを感じており、「都合のいい時だけ仕事を振るのではなく、長期的な付き合いができるように提案している最中で、物流システムを構築して積み込み作業時や輸送効率の向上につながる話をしている」という。

     さらに、「荷主側は物流品質ではなく、物流コスト削減だけを考えている。デフレで商品単価競争が激しい時だが、いい商品を作っても輸送品質の悪い会社に運ばせれば、いつか問題は起きる」と強調する。

     同社長は「一方的に無理難題をいう荷主が増えてきた。本当の意味でのパートナーシップを築けるように諦めず、提案を継続することが大切。企業の生き残りで必要なことはモノ(提案)を言える企業ではないか」と訴える。(山田克明)

    全体のムダをなくしてコストダウン

     冷蔵・冷凍品を含む食品をメーンに、総合的な物流サービスを展開するエムティーロジ(東京都江戸川区)の森谷英紀社長は、「単なる配送だけでなく、物流のプロが仕事の一端に入り込むことによって、保管や管理、配送といった物流のシステムを無駄なく組み、効率を上げることが大事」と話す。

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     総合商社から、ある輸入ブランド食品の配送を依頼された時、宅配便やエア便を繰り返し使ったり、賞味期限管理がしっかり出来ておらず廃棄処分量が多いなど、物流以外の部分での無駄が多かったという。そこで倉庫での日付管理などを総合的に提案し、年間で5000万円ものコスト削減に成功した。

     「廃棄を出さないことは荷主の資産を減らさないこと。廃棄費用も掛からなくなり出費を抑えられる。配送費を下げてコストダウンするのではなく、物流全体の無駄をなくしてコストダウンさせるのが物流のプロだと考えている」。(小澤 裕)

    確かな荷扱いを継続

     荷主への提案は「運賃を下げる以外にあるの?」という運送事業者の言葉が、大半の社長の本音かもしれない。

     しかし、ダイイチ・トランスポート(滋賀県東近江市)の夏原智雄専務は、荷主に喜ばれるのは「日ごろから荷扱いをきちんとすることに限る」という。提案ではなく、「延着をなくし、誤配をしない。これを心がけること。もちろん、経営者だけが考えるのではなく、ドライバー一人ひとりがきちんと理解し、実行することが大切。このようなことは他社と少しの差を生む」と指摘する。

     京都府の運送事業者は「荷主サービスの一環としてGマーク認証を取得したが、荷主がGマークの存在を知らないため、何の役にも立たない」と漏らす。「もっと、Gマークを広報してもらいたいが、そうすると、『Gマーク認証を持たない運送事業者は失格』となり、許可制度の存在意義うんぬんの話になってしまう」とも。(小西克弥)

    積み合わせと一時保管

     大阪府高石市に本社を構えるイワオ流通サービス(岩尾徹社長)は、荷主に対して物流効率に関する様々な提案を行い、業績を伸ばしている。同社では平ボディー8?車などいわゆる中型車を中心に、パイプやドラム缶、鋼材など荷姿が異なる荷物(ゲテ物)を積み合せて輸送。さらに6月からは、荷物の一時保管に対処するための保管庫(敷地面積300坪、建物面積170坪)を設けて、さらなる発展をめざしている。

     岩尾浩司常務は、「当社も今から数年前までは、1台に同じ荷物だけの輸送をしていた。しかし、ある荷主が積み残し荷物のパイプ輸送に運賃は出せないとの相談があった。当社でも効率的な輸送を検討したところ、時間指定がなければ荷台の隙間を使った積み合わせ輸送が出来ることを提案。荷主もその条件で輸送を依頼してきた」と提案のきっかけについて語った。

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     同常務は「他社の荷主にも積み残しや半端物などの荷物の積み合わせを提案したところ、ほとんどの荷主が苦労していたことが分かり、本格的にゲテ物荷物の積み合わせを行った。また、荷主企業が完成商品の一時保管に苦労しているのを知り、当社が車庫として借り入れた保管庫を荷物の一時保管として提供。さらに必要な数だけ出荷するサービスを提案したところ、大変喜ばれ、現在、一時保管配送を一手に引き受けている」と提案が荷主ニーズに適合したことを語った。

     「ゲテ物荷物を取り扱う荷主では、大手運送会社に小口のゲテ物を依頼しても、思うような輸送ができず、ほとんどの荷主は困っている。当社ではこういった荷物を積極的に集め、自社の荷物と積み合せて輸送。さらに、一時保管庫を設けることにより、行き先の異なる荷物を取りまとめ、荷主も運送事業者にも大きなメリットと利益が発生する。今後もさまざまな提案を行い、荷主企業とともに発展していきたい」と話した。(佐藤弘行)

     
     
     
     
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