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白トラを是認 厚労省委託事業のテキストで
2011年10月21日
厚労省の委託で、日本労使関係研究協会(JIRRA、仁田道夫会長)が実施している「個別労働紛争解決研修」のテキストで、白トラ営業を是認するような解説が行われていることが分かった。10年度は社会保険労務士や企業の労務担当者、労働組合関係者ら610人が受講しており、受講料以外に厚労省から4810万円の受託金をもらっていた。国の予算で貨物自動車運送事業法などに違反する白トラ行為を助長しかねない内容で、同協会はテキスト作成時、こうした点に配慮しなかったことを認め、「来年度以降は内容を見直したい」としている。
事例では、1人1車の自家用トラックドライバー「東山さん」の例を挙げ、「東山さんは自ら所有するトラックで運送業務を行い、西田建材の依頼で建築資材を運搬する仕事が殆どを占めている」と紹介。受注量減少を理由に西田建材が東山さんとの契約解消を通知した場合にとることのできる法律上の措置を考察している。解説では、このドライバーは「労働者性が低い」と結論付ける一方、白トラ行為の違法性には一切触れず、労働法上の権利を持たない、こうした白トラに輸送業務を依頼することが合理的な手段と解釈できるような内容となっている。
国交省は、テキストについて「労働法関係の中で論議しているので運輸事業の規制は見落とされたのだろう。本来は労働契約や賃金の話だったものが、労働争議になってから問題点がすり替えられたり、混在してしまうケースもあり、単純に事例を批判することはできない」とコメント。ただ、「トラックの(行政)処分強化など、ここ数年の規制強化後は厚労省との会合、情報交換も増えた。白ナンバーもよく話題になり、その都度説明している」という。
白トラ営業を巡っては、60年代にダンプ1台持ちドライバー問題が浮上。ある地方の裁判で「荷主は『使用者』で、ドライバーは『労働法上の労働者』」と位置付ける判決があった。この時に自家用車による有償運送行為も「労働契約」であり、支払われるのは「労働賃金」という解釈が生まれた。このため、各地で「営業ナンバーのダンプを保有するより、白を傭車したほうがずっと儲かる」と、保有車両をどんどん白ナンバーに切り替えていく事業者も現れたほど。当時の運輸省が「白ナンバー即違法ではない」(次官談話)との見解を打ち出したことも拍車を掛けた。現在もダンプ1台持ちの「労働者性」については、曖昧な状態が続いている。
国交省は、白トラなどの違反行為に対して「法に基づいてきちんと処分しているが、時間も人も足らず、事故が起きて初めて発覚する場合が多い」と説明する。
トラック事業者向けコンサルティングを行う、あいち経営コンサルタントの和田康宏社長は「社労士などが受講するテキストの事例としては不適切。厚労省と国交省がトラック事業者に合同監査を行っているが、まだ縦割りで連携が不十分」と指摘している。(中道幸男、土居忠幸)
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