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「処分強化」の矛盾 運行管理者確保が困難
2013年11月28日
「事業用自動車の安全を確保するスペシャリスト」。国交省のHPで、このように表現されている運行管理者の重要性がますます高まっている。処分基準の強化によって、監査で不在が発覚すると一発で30日間の営業停止につながることもあり、各営業所は十分な人員の確保が必要となっている。
一方で、運行管理者試験の合格率が2割を切るなど合格のためのハードルが急に上がっているほか、11月からは改正された「運行管理者資格者証の返納命令発令基準」が施行され、「資格者が実際に運行管理業務を行っていないにもかかわらず、その名義を事業者に使用(選任の届け出をした場合を含む)させた場合」と「運行管理者試験の受験資格の詐称など、不正な手段により運行管理者資格者証を取得したことが判明した場合」は、新たに同資格者証の返納が単独で行えるようになった。ここにきて運行管理者への入り口が狭くなったとともに、出口も広くなった。このような流れを受けて、運送業界専門の行政書士・社労士の瀧澤学氏は「国交省は運行管理者の供給調整を行い、処分基準の強化と併せて、事業者の数を減らそうとしている」と捉えており、「今後、試験の合格率が高まることは考えにくいので、運行管理者の確保は、これまで以上に重要になってくる」と警鐘を鳴らしている。
「対面点呼をきっちり行うために約30人の営業所に6人の運行管理者を配置している。しかし、これでも休みをやれないくらい、いっぱいいっぱいの状況で、利益も上がらない」と話すのは、コンプライアンスを重視している札幌市の事業者。
「うちは100%対面点呼をしているが、多くの運送会社では、対面点呼を完全に行うというのは現実的ではないはず」とし、「運行管理者の確保が難しくなる中で、点呼をしっかり行わなければ重い行政処分が下されるというのは矛盾している。国交省は運送事業者にしっかりと点呼をさせたいのなら、運行管理者を増やすような流れにすべき。現場の実態に合わせて運行管理者のあり方、点呼のあり方を見直す必要がある」と疑問を投げかける。
40人を超える営業所で対面点呼を徹底する同市の別の事業者も7人の運行管理者を抱えており、「運行管理者は募集をかけてもドライバー以上に反応がなく、新規採用が難しい。現在、深夜2、3時の出庫のために会社に出てもらっているが、不規則な勤務のため健康面が心配になる」と話し、選任されている運行管理者の不在や点呼の未実施で行政処分が重くなることについては、「重い罰則を受ける運送会社を生み出すための制度改正」と捉えている。
ただ、同事業者は、試験を通らないで運行管理者になれる「一定の実務の経験(事業用自動車の運行の管理に関し5年以上の実務の経験を有し、その間に運行の管理に関する講習を5回以上受講)」制度には批判的で、「医者の横に5年間いたら医者になれるようなもの」と一蹴している。また、5台割れ事業者にも運行管理者の選任を求める施策に対しても、「国交省は5台割れに対して許可取り消しか増車をさせる必要があるはずだ。このあたりの施策も矛盾が多い」と強い口調で話している。
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