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    ナイスキャリーサービス・猪上社長 2週間で7往復

    2011年4月25日

     
     
     

     仙台市宮城野区までトラックで支援物資をピストン輸送しているナイスキャリーサービス(愛知県小牧市)の猪上章社長。震災発生から2週間ですでに7往復。取材したこの日も絵本やクレヨンなど子どもの心を癒すための物資を運んで現地に出発していった。本来なら、同社にとって3月のこの時期は引越シーズンのかき入れ時。しかし「被災した人は今、どんな気持ちでいるのかと思うと放っておけなかった」(猪上社長)と体が勝手に被災地に向かった。会社からも「あとは我々に任せて思うようにやってください」と背中を押してもらった。


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     自身の定期預金400万円を解約し、ポータブル発電機や水120ケース、カイロ、生理用品、ほ乳びん、粉ミルクなど、思いついた生活必需品を買い込み2tトラックに積み込んだ。そして弟の智さんと交代しながらハンドルを握り続けること18時間。ようやく到着した仙台の惨状に言葉を失った。
     道路は何とか通行できたが周囲はがれきの山。焼け焦げたような悪臭とともにたくさんのカラスが上空を飛んでいた。また、テレビなどでは避難所の映像を目にすることが多いが、かろうじて家が残った人は自宅で生活している。そういった人たちは後ろめたさから避難所に物資をもらいに行けず困っていることも知ったという。「自治体の指示を待っていると動きが遅くなる。それまでのつなぎとして非常時での民間の運送会社のネットワーク化は必要なのではないか」と真剣に話す。
     4回目の輸送から愛知に帰ってきたとき、毎年老人施設にカレンダーのプレゼントをともに行っているボランティア仲間から「実際に現地を見てきた感想を述べてほしい」と、名古屋市内のNPOや大学サークルのメンバーら40人が集まる勉強会での講演を頼まれた。講演後に「自分も被災地でボランティアがしたいが、どうすればいいか」という質問を受けた猪上社長は、「本気で考えているなら、もっと具体的な質問をするだろう。交通手段がないというのなら俺が現地まで乗せて行ってやる。口で言うだけなら、ただの偽善者だ」と、意識のズレに涙が出る思いでそう答えた。
     帰り際、その場に同席していた地方紙の記者に呼び止められ、同社の活動が翌日の紙面で紹介された。「売名はしたくない」と断ったが、記者からは「あなたの行動が載ることで物資の送り方が分からず困っている人の役に立つ」と説得された。
     震災発生から2週間で7往復。現地では、防災センターとやりとりし、物資を届けた際に必要な物資を聞く。その場で会社に伝え、戻るまでに用意してもらい積み込むと仙台へとんぼ返りする。車中泊が中心だ。また、社長の思いに共感した講演会の出席者一人を被災地まで乗せた。現在は、同じピアノ輸送の仲間で九州から関東まで荷物を載せ替えながら走る、タスキリレー体制も整いつつあるという。
     取材した3月24日も、娘が通う幼稚園の父母会に呼びかけて集めた絵本やクレヨンが段ボール50箱分、さらに中国の友人から届けられたマスク100万枚を2tトラックに積み込んでいた。そのどれもが被災者への励ましのメッセージ入りだ。
     物資だけでなく送り主の思いも乗せて、猪上社長は再び被災地に向けてハンドルを握る。

     
     
     
     

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