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    重苦しい巡回指導の現場 「身内売る」

    2013年12月11日

     
     
     

     政令市を抱える西日本地域の県ト協。ト協職員の立場でもある適正化事業実施機関の幹部の一人は巡回指導の結果について、10月から始まった「悪質性の高い営業所は即、通報」という新しい体制に頭を痛めている。
     員外も含めて2100の事業所(霊柩は除く)が営業する同県では現在、いわゆる「5台割れ」が333事業所を数え、そのうちの63.1%が1〜3台のトラックで商売をしている状態という。そうした事業所では今回の速報対象となる運行管理者、整備管理者が不在(未選任)のままというケースも目立つ。来年4月30日まで運管選任の猶予期間が設けられているものの、残された運管試験はあと1回。来春以降、機械的に「速報」できるのか、仮に放置が発覚すれば適正化機関の存在意義も揺らぐだけに巡回指導の現場は重苦しい。


     受注の減少や人手が足りないなど理由はさまざまだが、とにかく保有車両が法で定める5台を割り込んでしまった零細のオーナーらの間で現在、「どこまで本気なのか」「30日間の事業停止になれば間違いなく倒産する」という声が広がっている。かつて「5台に達していないから『運管者は選任しなくても構わない』というアドバイスを(指導員に)もらった」という事業者は、手のひらを返すような行政の対応に困惑する。同社は台数こそ5台未満となっているものの、社長が運管資格を持っているために未選任の対策で苦しむことはないが、「処分の矛先が変わったせいか、最近は5台への増車をうるさくいわれなくなった」と苦笑する。
     同県には前述した通り、ト協に加入していない事業者も含めて2100の事業所がひしめき合っているが、今年5〜7月の3か月間に適正化機関の指導員がルール改正の周知も踏まえて集中的にチェック。結果として333の事業所が法で定める最低車両台数の5台に達していないうえ、そのうちの40.5%(135事業所)からは運管者の選任届さえ提出されていない現実があぶり出された。
     適正化機関の幹部指導員の一人は「選任届が出されている事業所であっても、退職によって実際には有資格者が不在になっていたり、なかには資格者の名義だけを借りるような例も見受けられる」と指摘し、事実上の「運管者不在」の事業所はさらに膨らむと予想する。運管不在の猶予が切れる来年5月は、実態の洗い出し作業からも丸1年となることで、「チェックした事業所を再度、優先的に巡回することになる」(同)としており、早ければ半年後にも運輸支局への速報事例が出る可能性もある。
     過当競争を繰り広げて久しい実運送の現場では「産んで育てず、出来が悪ければ見殺しにするという状態。参入規制こそ厳しくすべきではないか」と、運輸行政によるネグレクト(育児放棄)を糾弾する声は大きい。運輸当局がやるべき仕事を手伝う格好の適正化機関内部からも「なぜ5台未満の事業所が存在するのかという立ち位置でいえば、台数割れになる減車を受け付けてきた行政にも責任がある」との憤りが漏れ聞こえる。同県では究極の零細である「1台」が46事業所と、全体の2.2%を占めている。
     実質的には来年5月からとなる〝大ナタ〟の当事者である事業者らは戦々恐々の様子だが、前出の幹部指導員は「(リストアップした事業所を)優先的に回ることは確かだが、例えば運管試験や有資格者の採用などに前向きに取り組んでいる姿があれば、その様子は運輸支局への報告書の備考欄に記載する」と説明。「大目に見る」というような期間が明言できるわけはないものの、「できるだけ詳細な現場状況を行政に伝えたい」という。
     一方、速報を待つことになる運輸支局では「監査結果や処分内容までを知らせるという意味ではないが、速報事案にどう対応したかを適正化機関にフィードバックする必要はある」(監査担当の専門官)と、通報があれば漏れなく監査に入ることを示唆。備考欄に記載される可能性がある〝情状〟については「理解できないわけではないが、監査の内容を変えることはない」としている。

     
     
     
     

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