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ブログ・花房 陵
規模で負ける現場、勝つ秘訣
2007年10月25日
●規模の経済性
スケールメリットはどんな産業にもあてはまる、ビジネスの原則です。小売店は大型になれば
なるほど売上も上がり、利益率も利益額も成長しやすくなります。ただし、適正規模という経験
則もあって、無暗な拡大は官僚主義に陥ります。
事業の多角化も顧客規模を拡大するために取られた戦略ですが、結局のところ「顧客はそん
なに自社には来てくれない」という障害があることに気づくのが遅れ、百貨店や総合家電が苦
戦しているところです。
国際巨大企業も事業多角化の失敗を『コングロマリットディスカウント』と定義づけて、GEが家
電を辞めた経緯があります。専業の優位性はマーケットが知っていた、というセオリーなんで
しょう。
苦手な欠点を直す努力より、得意の磨きを掛けて品質と格付けを高めるのが、正統派の戦略
になりました。マーケットが未熟で顧客に情報が足りないときには、「何でも一緒に、便利だわ」
という主婦の理論
だったとも言えます。
●範囲の経済性
単一事業を進めていると成長に陰りがでるのは仕方がありません。ライフサイクルカーブという
自然の法則が影響するからです。急成長の後には停滞と衰弱が訪れます。
それでも売上額の成長が必要なら、そして適正規模まで届かないなら、間接経費を吸収できな
い継続的な収支不足を補うには、範囲の経済性に目を向けなければなりません。
簡単にいうと「一緒にやる」ということです。事業多角のように「別のことをする」となると、情報も
資源も不足するか不十分です。そこに負けの原因があったのですが、同じような事を同時か同
期を図りながら一緒にするというなら、情報と資源が有効活用できます。
大きなビルを造るなら、商業用とオフィス、住宅、公共施設まで含めてしまう、というアレです。
自動車生産なら多品種混合製造ライン、ワンストップフルアウトソーシング、物流を含めた受発
注までのビジネスプロセスアウトソーシングという新手の事業です。
業界や商材、作業や扱いに慣れているなら、複雑なことはできないけれども通常オペレーション
なら一緒にできる。これが<業界を経験した事業>範囲の経済性の発揮です。同じような人た
ちが同じような作業や運用を同時にこなしてゆくという、業務規模ではない業務種類の拡大戦
略です。
大規模生産は圧倒的なコストダウンと品質の向上を経験的に獲得できますが、規模が及ば
ないときには早期に範囲の拡大を目指すのが戦略です。決して事業の多角ではなく、敢え
ていえば顧客との多次元接点というべきでしょう。顧客ニーズを掘り下げて一緒にできるこ
と、連続することが効率につながることを探し出してゆくことです。
物流活動は生産、調達、販売の後方支援部隊ですが、ちょっと出しゃばって前面に出てゆ
くことです。
営業の受注業務を半分、生産の購買業務を半分、品質設計の基礎データ集め、情報システ
ム販売系
のホスティングと運用管理、データバックアップと情報保管、・・・・・・結構ありますよ。
●信頼を獲得するより業務知識を高める
物流マンはプロを自認します。何より長けていることを自慢しますが、日々の扱いで慣れて
いる商材についても長けることは可能です。教えを請いながら、見学と研修を受ければ物流
本業にも役立つし、事業の範囲を広げるチャンスを知ることができます。
現場を守るお母さんになりすぎずに、荷主や顧客の”現場”にも出向くべきでしょう。
一緒にやる、ビジネスがきっと見つかるはずですが、「提案には根拠と信頼」というように、
説得力のある話題を持たねばなりません。研究は細く深くねばり強く、得意になるまで続け
るのです。この記事へのコメント
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筆者紹介
花房 陵
イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント
コンサル経験22年、物流から見た営業や生産、経営までをテーマに 28業種200社以上を経験。業種特有の物流技術を応用して、物流 の進化を進めたい。情報化と国際、生産や営業を越えたハイブリッド 物流がこれからのテーマ。ITと物流が一体となる日まで続けます。 -
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