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ブログ・花房 陵
売上げの科学 物流でできること
2008年7月4日
●売上が上がらないと嘆かれて、しわ寄せが来るのはどうも
会社の心臓っていうのは俺たちのことだから、販売のことは任せておけよ と頼りにしていたら、売上が上がらないから物流コストを3割下げなきゃ立ちゆかない状況になっていると急に言われても困る。
熟練や進歩、効率化の追究の上に業務改善を積み上げて、毎年コストダウンを続けている以上、今期から急に3割カットなって出来やしない。協力会社への値下げ交渉もついこの間やったばかりなのに、・・・・こんな日常がオリンピックのお祭り気分が醒めたとたんにやってくる。
販売や売上に物流部門は、自らのコストを下げるだけしか仕事の目的が無いのは寂しい限りで、物流部門の存在意義が値下げなら自分たちがやせ細るばかりで、明日も未来もちっとも明るくならない。
本当にそうなのか と自問するのは正しい悩みです。コストダウンは手段であって目的ではありません。企業の存在意義も利益やキャッシュというのは手段であって売上もまた手段です。目的は市場の創造、顧客の想像、継続的な進化発展というのが、ドラッガー大家の主張で皆信じています。
さりとて、毎月の月次業績で進化や進歩、蓄積や習熟などより売上高が何より光って目につくのはどこ企業も一緒で、▲印がつくと言い訳、理由、原因対策、対処法に明け暮れます。どうしようと前向きな可能性を考えても、おまえの部門はコストダウンと言われたら、「いつもの、あれとこれを止めれば下がる」と反論もしたくなりますよね。
そこで、売上を科学してみましょう。最初は、単価と回転もしくは客数でしょう。販売単価が下がれば、営業はムリして回転や回数を増やそうとするから、当然として物流回数も増えてきます。物量と売上は比例しませんから、特にコストが突出するのは仕方がない。回転と回数を増やさないで、販売単価の下落を阻止するには、スピードを上げる、時間を延長する、処理規模を拡大する、・・・と手段がまだあるのに、その辺の企画はなかなかできていないようです。
●売上には、5種類の可能性がまだあるのに手をつけていない
販売単価×回数 の他にも、売上にはまだまだ種類があります。ここまで考えが及べば、物流部門がコストダウンの前にも主張や提案ができるものです。値下げの前にまだすることが残されている事実に気づきましょう。
1 既存顧客を離反・減少させずに維持して、むしろ拡大継続させる
★ほおって置くと人は移動するし、購買担当人事も変わります。「満足していない顧客」は、いつ心変わりして「不満客」にもなりかねません。フォローアップの重要性は、営業は経験で知っているけど実行するのに不十分です。
2 競合企業との競争条件で、価格戦術以外の優位性を見つけシェアを拡大させる
★営業は価格で負けた、納期で負けた、サービスで負けたと言い訳するが、その反省を活かして、~~で勝った という声を聞かないのは、やはり理由にムリがあるのでしょう。競争条件の本質を見極めていないのに負けるのは、教科書代にもなりません。価格、納期以外のちょっとした要素でモノは売れるのです。しかも、コツがいる。売れない理由はとことん詰めていく学習量が必要です。
3 市場マーケットをユーザーの教育や啓蒙によって、マーケットそのものを拡大させる(消費・購買量を増やし、他マーケットとの規模を上げさせる)
★お茶やおにぎりという定番が、定番商品だったのは数十年も昔のことで、お客はメーカーやディーラーに育てられて戻ってきました。ワインだって化粧品だって、そうです。声を聞いて買ってくれないから止めるのではなく、声を聞いて教え込んで使わせる、買わせる営業がいなくてはおかしい。パンを買いに来る客だけでは、パン屋はつぶれます。衝動買いを演出する、進める、押しつける、買って喜ばせる工夫がいっぱいあるから、パンの小売店は活き活きとしているのです。
4 既存マーケットに関連する隣接マーケットへ新規参入(既存商品転用、拡張)
★食品と健康食、医療付帯品、衣料とスポーツ、建築と趣向趣味、化学と技術、玩具と熟年、子供服を老人に買わせる、などと商材のマーケットは、かならず別のマーケットと重複しています。重なりに気づかないのは、街を見ていないから、顧客の消費現場や家庭を見ていないから、とマーケティングの先生は様々な本に主張しています。もっともなことですが、学ばない営業が多いのは、そんなこと知ってると思いこんでいるからです。調べる、見る、観察する、売るための苦労は顧客との接触を深めれば見えてくるモノです。
5 新規事業による新規マーケットへの新規参入(新商品の開発)
★量産工場はOEMの可能性があり、稼働率を他社に頼ることができます。工場は半製品を他社に売ることも出来るし、仕入れることもできます。保険は併売するようになり、銀行は0%から30%の利息を付けてお金を売っています。消費財は生産財になり、生産財はマニアックでなくとも新しい消費財の可能性があります。流通は直販、併売、委託、オークション、バーターがあり、決済条件によって価格を操作することだってできるようになっています。ましてや、お客は世界に広がりました。時空を越えて販売のチャンスは今を思えば無限に広がって、手がけていないルートがまだまだあります。
以上、5つのルートに物流マンが関われば、優れたアイデアと今までやっていない物流手段を見つけ出すことでしょう。全部やってから、コスト問題を考えるというのが今の時代ではないでしょうか。八方手詰まりと思うのは勝手だが、革新とは人が気づかないことや重要ではないと思いこんでいるところを、あきらめずに芽を見いだすことから生まれます。1%のひらめきなんていう上品なモノではなく、執念と言ってもいいでしょう。
●物流は頼りにされたい、と願いながらルーチンワークに暮れるのです
購買や製造技術だってコストダウンを言われていますが、同じ仕様、同じ性能の商品をいつまでも作り続けることはなく、常に進化を求めています。物流も同じで、確かに同じ仕事なら効率によるコストダウンを規模や範囲の経済性で実現しようと努力します。
環境が変わる、時代が変わる、商品や売り方が変わると言うから、研究や工夫のし甲斐があるのであって、売上が下がるからコストダウンならもう止めたいと思うはずです。もうできないって言いたいはずです。新しいやり方、今までとは違うチャネル、研究しなくては実現できない物流に挑戦したいと思う意欲を削がないために売上をもっと科学して欲しい。科学的な営業、販売というモノに挑戦して欲しい。
物流は販売のためにあるけれども、販売が滞るときにはいらないのです。この記事へのコメント
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筆者紹介
花房 陵
イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント
コンサル経験22年、物流から見た営業や生産、経営までをテーマに 28業種200社以上を経験。業種特有の物流技術を応用して、物流 の進化を進めたい。情報化と国際、生産や営業を越えたハイブリッド 物流がこれからのテーマ。ITと物流が一体となる日まで続けます。 -
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