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ブログ・花房 陵
2.IFRSって知ってますか
2010年8月18日
今年から新しい会計基準が本格化してきた。公開企業の連結決算報告書を従来の方式とは異なる基準で作成するものである。
日本電波工業は我が国で初のIFRS(国際会計基準)で決算書を提出した。原始はホームページで開示されていて、会計の専門家は必死に解釈を続けているところである。
このIFRS方式は2015年までには強制適用となる見込みで、公開企業とその関連会社の財務担当部門はこの夏、さらに暑い日々を過ごしている。
日本電波工業は500億円の企業で、親切にも従来方式とIFRS方式との違いを説明している。何が変わったか?
決算時期の変更があると、期間の違いで売上や利益に変化がある。同じように決算方式の基準が変わったのだから、売上と利益が変わるのは当然だろう。数値が変わるだけなら財務担当の仕事の範囲であるけれど、科目の違いや科目の解釈や定義が変わるなら、全社で大慌てになる。今、これがまさに起きている。
企業会計には3種類がある。管理会計、財務会計、税務会計のそれぞれは、内部管理、外部情報、納税のためにあり、昨今の資本自由化の流れは外国人投資家や企業同士のM&Aには外部情報の標準化が必要になっている。
わが国の会計制度は金融庁手動で行われてきており、こちらもガラパゴス化と呼ばれてきた。日本独自の会計基準は日本でしか通用せず、特に証券市場では企業の発行するIR情報だけではほとんど役に立たず、記者や情報通の分析と解説が必要だった。いわゆるのれん代とか含み資産というものがそれである。
金融自由化は公開企業にとって福音だった。銀行による間接金融から、企業が株券を印刷することによって資金を手に入れられる直接金融の時代に変わったからである。
上場公開起業4000社のクラブはいつでも印刷によって(昨今は株券の電子化によって、株券の印刷すら不要!)自由にふんだんに現金を手に入れられるような特権が与えられているのだ。
特権は責務と交換にあり、ノブレスオブリュージュ=貴族の義務、というようにさまざまな規制と監視が行われている。外部監査人に経営監視もその一つであり、一昨年の内部統制ブームも必然の流れであった。
・IFRSと物流会計
公開企業とその関連会社にとってのノブレスオブリュージュは売上げの監視である。売上げを粉飾することはさまざまな動機を持つからなんとしても監視しなくてはならない。内部統制で言う牽制と管理はその際たるものであった。
売上げは出荷基準というのがわが国の原則だったから、物流部門の落ち度は売上げの粉飾に直結していたのである。
内部監査により牽制が行われても依然として粉飾はなくならなかった。物流部門が加担した事件もあり、内部統制は片手落ちのザル法とまで言われたこともある。
そこで、売上げの確定方法を債権の完全なる移動、すなわち検収基準、承認基準を採用しているのがIFRSである。
配送完了の伝票記録が唯一最終の売上伝票に匹敵する。「ハン取り回収」の重要性が再認識されたのである。
さてこの配送伝票の完全回収と記録保管の再認識は、物流現場にとっても大きな影響をもたらすだろう。「あたりまえのことを確実に徹底して」という建前では、配送伝票の回収は当然の作業だがかなりの負荷とリスクを負うことになる。あえて説明しない。
このようにIFRSでは新しい常識としての会計方法が取り入れられようとしており、わが国の従来の方法は完全に撤廃されること確実なのである。2015年には公開企業4000社とその関連会社およそ10万社に影響し、その物流サービス提供会社もまた大きな変革をもたらすことになる。
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筆者紹介
花房 陵
イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント
コンサル経験22年、物流から見た営業や生産、経営までをテーマに 28業種200社以上を経験。業種特有の物流技術を応用して、物流 の進化を進めたい。情報化と国際、生産や営業を越えたハイブリッド 物流がこれからのテーマ。ITと物流が一体となる日まで続けます。 -
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