-
ブログ・経営承継支援
第2回「M&A前後におけるオーナー資産の処理に関する税務上の留意点」
2020年3月8日
皆様、こんにちは。経営承継支援の向 洋平です。
中小企業では、会社と個人が資産面でも一体となって経営していることが大半であるため、会社の貸借対照表(BS)にオーナー使用資産があったり、逆に個人所有資産であるものの会社が賃貸借して事業利用している場合が多くあります。
一方、会社が資金的に苦しい場合に、オーナー個人が会社に資金を貸し付けざるを得ないケースも多く、結果的に、BSに代表者借入金が残っている場合も少なくありません。そこで、今回は「M&A前後におけるオーナー資産の処理に関する留意点」を解説します。
まず、会社とオーナー間での資産の買い取りや現物支給などは、法人税法上、時価で取り引きする必要があります。時価以外の取り引きを行った場合には、会社には寄附金課税、個人には役員賞与課税という「時価と実際取引額との差額に対して課税(税務)リスク」が生じます。結果、この取り引きがM&A前後に行われる場合には、税務リスクは対象会社に残り、M&A上の論点となる場合があります。
オーナー借入金については、M&A後に返す場合には買い手が対象会社に貸し付ける(肩代わりする)のか、放棄してもらう場合にはその際に生じる債務免除益課税はどれくらいか(繰越欠損金があるのか)といったことを決めておく必要があります。株価にも影響がありますし、買い手の投資額にも影響があるからです。
一方、オーナー貸付金についても回収するのか、現物支給(役員退職慰労金の一部として)するのかといったことを決めておく必要があります。オーナー貸付金を回収もしくは現物支給できる場合には株価に影響はないですが、貸倒損失を計上する場合には税務上は有税償却するしかないため、対象会社に税負担が生じ、結果、株価にも影響が出るからです。
◎関連リンク→ 株式会社経営承継支援
向 洋平
関連記事
-
-
-
-
筆者紹介
経営承継支援
価値をつなぐ、想いをつなげるM&A
中堅・中小企業の円滑な事業承継のためのコンサルティング業務と中堅・中小企業の継続・発展に資するM&A仲介・助言業務が得意。
https://jms-support.jp/向 洋平 (取締役 経営企画部長兼管理部長/税理士)
明治大学商学部卒業後、税理士事務所で税理士補助業務に従事。2004年、大手M&A専門会社で多数のM&A案件及び内部統制体制構築業務に従事。2009年、立命館大学大学院を修了、会計事務所系コンサルティング会社にて日中クロスボーダーM&A実務に従事。2015年、当社にパートナーとして参画。その後、当社福岡事務所長に就任。2018年、執行役員に就任。2019年より現職。専門は、経営計画、事業承継(相続/MBO/M&A)、組織再編、コーポレートファイナンス、資本政策に関するコンサルティング業務。 -
「ブログ・経営承継支援」の 月別記事一覧
-
「ブログ・経営承継支援」の新着記事
-
物流メルマガ