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ブログ・野口 誠一
第310回:不況は経営者を育てる
2011年7月14日
さすがに極楽トンボの私も、目の前に「倒産」の2文字がチラつきはじめた。眠れない夜が続く。すべて自分の播いたタネと知りつつも、家族に対するすまなさ、社員・従業員に対する申しわけなさ、これから何を、どうやって生きていけばいいのか、そうしたもろもろの不安が夜ごとに襲ってくる。
私のように悪運が強すぎて、挫折を味わったことのない者に限って、こういう局面になると、まるでなす術を知らない。不安と恐怖のマグマが頭の中を駆けめぐり、いっこうに出口も方策も見えてこない。初心を忘れて高慢に陥ったバツであり、放蕩を重ねたツケである。
私はいま、講演や執筆の機会があるごとに、「不況はときどきあったほうがいい」と公言してはばからない。それが、私が高い授業料を払って「倒産」から学んだ教訓だからである。不況は経営者を鍛えていく。何度も不況をくぐり抜けた経営者でなければ、今回のようなリーマン・ショックに続く本当の危機は乗り越えられない。
それに、好況やかつてのようなバブル景気が長く続くと、よほどの経営者でない限り初心を忘れ、本業から投機に走っていく。それは先のバブルで如実に証明されたことであろう。製造業までが本業を忘れ、土地や株式投機に走ったのではなかったか。そしてバブルがはじけた。本業は黒字なのに、投機のための借金で多くの大・中小企業がバタバタ潰れた。もったいない話である。
不況はバブル経営者に初心と本業を思い出させ、私のような「経営者もどき」をふるいにかけて退場を促す絶好のチャンスである。淘汰は自然の摂理であり、進化の条件である。
経営とて同じこと、勝ち残るべき経営者が勝ち残ってこそ、強力で効率のよい経済国家を実現できる。それがグローバル化時代の要請でもある。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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