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    運送業界に「営業マン」は必要か

    2010年4月19日

     
     
     

     サプライチェーンという枠組みの中で、物流効率化を企画する提案営業なら差別化は図りやすいが、輸送だけを捉えた場合は差別化が難しく、価格競争に陥りやすい。そうした性質が、営業マンが育たない土壌を形成しているのかもしれない。
     安易に顧客のついた配車マンを雇用するケースも多く、こちらは売り上げアップには効果的だが、下請け仕事ばかりで将来的なメリットは小さい。はたしてトラック業界での営業マン育成の土壌はできるのか。事業者の事例を追った。


     千葉県の事業者は昨年、営業マンを採用した。大手運送会社に勤務し、数々のプロジェクトに携わってきた経験者で、当然営業にも従事し、人脈もあるはずだった。しかし、ふたを開けると…。
     雇用から1年が経過するが、これといった成果に結びついていないという。「扶養家族もおり、それなりに営業はしているのだろうが、結果が出ていない以上、営業マンとしては仕事していないことになる」とため息をつく同社社長は、1年経って解雇を通告せざるを得なくなった。
     「成果が出ていないものに給料を払っていれば、周囲の士気が下がるし、実際に社内で浮いた存在になってきており、当人もそれに気付いていた」と指摘する。
     なぜ、成果を出せなかったのか。「大手ではブランド力で営業できるが、うちのような中小では個人の力量によるところが大きい」という同社長は、「実際に運賃だけで提案しても仕事を取るのは難しい。中に入り込んでいかなければ難しいので、手当たりしだいの営業で成果を出すのは至難の業」だという。その上で、「雇用してみてわかったが、中小トラック事業者は業種内容からいって、営業マンを雇用していくのは難しい」と話している。
     一方、埼玉県の事業者も営業マンを雇用しているが、1年経って、ようやく形になる成果が出つつある状況だという。「結果が出ずに我慢の日々だった」と振り返る同社長だが、その甲斐あってようやく結果が見えてきたことに、内心ほっとしたとこぼす。
     同社が雇用した営業マンは他業種で営業を経験し、それなりに結果を出してきた人だった。知り合いの紹介で雇用しただけに、ようやくの成果に胸をなでおろす同社長だが、「トラック業界では営業は本当に難しい」と本音を漏らす。営業マンも、「これだけ難しい営業ははじめて」とこぼしていたという。
     相手の状況把握から始めるため、どうしても時間がかかる。「こちらから見ると無駄と思えても、それを繰り返してようやく結びつくことも多い」と同社長は話す。その上で、「無駄なコストを出せるだけの余裕を持てない業界にあって、営業マンが育つ土壌の形成は難しいのではないか」と指摘している。
     大手物流企業には営業部があり、そこで専門に営業が行われる。潤沢な資金力とブランド力を武器に日夜成果を出し、営業として確固たる地位を築いているといえる。しかし、ブランド力もなく、資金力も乏しい中小・零細にとって、成果に時間の掛かる営業マンを育てるのは、構造上難しいのかもしれない。
     今ある荷主を大切にすることで、仕事が広がるケースが多い業界にあって、やはり現場の育成と品質向上が、トラック業界で最も営業につながる取り組みかもしれない。

     
     
     
     

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