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    適正化の報告方法強化 「速報事案」に不安の声

    2013年7月17日

     
     
     

     地方適正化実施機関による巡回指導で発覚した「悪質な事業者」を速報させるなど、行政機関への報告方法が強化される。新しい行政処分基準の適用に先立って5台未満の事業者への運行管理者の義務付けも始まり、1年間の猶予が与えられたとはいえ、対象事業者には残り2回の運管試験で合格者を出せるかが事業存廃の岐路となる可能性もある。また、点呼などの記録簿の改ざんも速報事案となるが、「ありのままを記せば問題が浮かび上がる」という現実がトラック事業者を困惑させる。一方、ト協職員の顔も合わせ持つ適正化指導員には「厳正な職務執行」と「身内を売れるか」という板挟みに苦しむ姿もある。
     適正化機関の指導員が巡回した結果を運輸支局などに報告する方法が10月から、悪質性によって「速報」「定期報告」「相談」の3つに分けられる。気になるのは〝悪質〟のレッテルを張られることで、「巡回指導した日から1週間程度をめど」とする速報事案だ。対象となる違法行為は「まったく点呼をしていない」「まったく運行管理者、整備管理者がいない」「まったく定期点検を実施していない」という極端なケースばかりだが、運送現場からは不安がる声が多い。


     「運管の試験は今年8月と来年3月。あと2回のチャンスで、ワシらのような年寄りには酷な話」と、商売を始めて半世紀近くになるという高齢の特定事業者。「いまは3台だが、トラックを増やすほどの仕事はない。難しい試験を受けてまで続ける意欲もない」と廃業をにおわせる。
     「自分がハンドル、女房が運管者という二人三脚で始めたが、女房が出て行ってから運管者は不在になった」と、トラック4台の中国地方の事業者。「増車のためには運管者の増員が必要だった当時、他所から運管者の名義を借りてトラックを買った」と打ち明ける事業者もいるが、いずれも今回の報告方法の強化に従えば「速報」の事案となる。
     ただ、点呼や運行管理者、整備管理者、定期点検が「ゼロ」で速報されるケースは少数派。多くの事業者が不安がるのは、定期報告や相談事案とされているものの、巡回指導で「大変悪い」(E評価)と判定されたにもかかわらず「3か月以内に改善報告を行わない」という場合や、「記録簿の改ざんが疑われる営業所」などについては速報事案に準じる対応が取られる点だ。
     広島市の事業者は「点呼簿や運行指示書に問題がないかといえば、はっきりいって自信はない」という。岡山市の事業者も「うちの場合は積み込みや、荷下ろしが完了した時点で会社に入れる電話連絡を点呼として記録。形式張ったものではない」と、早急な手直しを痛感している。
     速報事案は10月から適用される新しい行政処分基準に沿って、例えば前述の「すべてゼロ」の違反なら最悪の場合に30日間の事業停止となるほか、「乗務記録の不実記載」「運行記録計の記録の改ざん」などの処分量定も30日車(現行10日車)に引き上げられる。それだけに「守りたくても守れない」という現実と向き合う運送現場は混乱するばかりだ。
     一方、適正化機関の指導員も心中は複雑。ある幹部は「ト協職員の顔もある。『だれのお陰でメシを食っているのか』といわれることもあり、身内を通報する難しさは否定できない。そうかといって(悪質事業者に)目をつぶれば、今度は『メシを食わせてもらっているのなら、(速報するなど)しっかり働け』と叱責される」と、板挟みの苦しい立場を吐露する。

     
     
     
     

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