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物流ニュース
「壊れない触媒」を運送会社に提案 N2O問題の重要性を知って
2024年12月31日New!!
「トラックは壊れすぎの印象がありませんか」。運送業界にそう呼びかけている東京大学の脇原徹教授は、ディーゼルエンジンの排ガス処理に必要な〝壊れない触媒〟「ゼオライト」の研究開発を行っている。尿素SCRシステムではそもそも、普通では起こらない反応を無理やり起こして排ガスを処理するため、触媒も劣化しやすくなっている。そのため、トラックもかなりの頻度でメンテナンスを行わなければ壊れてしまう。「壊れない触媒」をつくることは、地球環境はもとより、運送会社にとってもメリットが大きい。
トラックの排ガス処理システムは、アンモニアという還元剤を使って大気汚染の原因となる窒素酸化物(NOx)を窒素に無害化している。
だが、「実のところ、排ガスの処理システム自体がまだ完璧なものではないので、無理がたたって触媒として働かなくなるという問題が生じている」と脇原教授はいう。
これによって、NOxの浄化率が悪くなれば、大気汚染の原因となる一酸化窒素(NO)や二酸化窒素(NO2)、さらには二酸化炭素(CO2)の約300倍の温室効果を持つ亜酸化窒素(N2O)が大量に排出されてしまう。破壊力のあるN2Oが排出されるとオゾン層が破壊され、地球温暖化が進んでしまう。
だが、N2Oについては二酸化炭素などと比べてあまりにも関心がもたれていないため、地球温暖化の研究者でさえディーゼル車から大量のN2Oが排出されていることを知らない。この状況に、同教授はN2Oの問題について提言し続けている。
同教授は「環境問題と運送会社運営は実はつながっている」として、「トラックが壊れなければ、車両の維持費が抑えられるので会社の経営が安定し、ドライバーの給料を上げることができる」と話している。
トラックは一般的に20万kmを走行したあたりで排ガス処理システムが詰まってSCR警報ランプが点灯する。排気ガスを処理する触媒が劣化して壊れてしまうと車両が動かなくなるため、脇原教授は「壊れない触媒が出てくれば運送会社にとってもメリットが大きい」と話している。
このように、壊れない触媒、壊れない排ガス処理システムをつくるということは会社にとってはもちろん、地球環境にとってもメリットがあるが、国や世間はなかなか動かない。だが、ことの重要性を考えると「壊れない触媒」の開発を進め、N2Oの問題を周知していく必要がある。
同教授は「2027年のユーロ7で、N2Oが規制されることになっているが、それで安心して、まだ対策は先で良いという空気が生まれてしまう恐れがある。規制に対応するためにも今のうちから動いておかなければ間に合わない」と話す。
脇原教授が開発を進めているゼオライトが大量に生産できる状況になったとしても、自動車メーカーは極めて慎重で、実際に車に乗せるまでには多くのプロセスがあるため、自動車に採用されるまでに5年はかかってしまう。壊れないような仕組みを早急につくるためにも、「声をあげて行動に移すタイミングが来ている」としている。
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