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    社員の流出は大きな損失 定着率向上を考える

    2018年4月12日

     
     
     

     「本当に困っている」「なんとかしてほしい」「手は尽くした」…なんとも悲痛な言葉の数々だが、これはいずれも人手不足にあえぐ事業者の声だ。新たな人材を招き入れることが難しくなっている今、既存社員の流出は文字通り大きな損失となる。事業者にとっての「財産」である従業員を、いかにして守っていくべきか。さまざまな事業者の取り組み例や意見を参考にしながら、定着率について考えたい。

     「不満をため込まない環境を作ることが重要」。そう語るのはNAO(福岡県遠賀郡)の中野菜穂社長。 同社では社員の定着率向上を図るため、面談や会議、食事会などのコミュニケーションの場を頻繁に設けている。

     面談については、社長自らが現状の確認や意見などを直接従業員から話を聞き、会議の場でも各部署の現状把握と改善点の抽出を積極的に行う。そういった社員からの要望について中野社長は、「会社が改善しなければならないものなのか、それとも会社の方針として理解してもらうべきものなのか」を考えることも重要と語り、環境の是正とは主従双方の歩み寄りでもあるとの意見だと述べる。加えて同社では「子育て中の女性が働きやすい会社にしたい」との思いのもと、学校行事への参加や子どもの病気の際などに保護者としての行動をケアするためのサポート体制にも注力。様々な観点から長く安定して働いてもらうための職場環境作りを、同社では今後も進めていく方針だ。

     続いて紹介するのは、神奈川県横浜市の安全輸送(久保田守社長)。同社の宅配事業部では160人ほど在籍する従業員らの活発な動きが定着率向上に一役買っている。有志が集まって結成された野球チームは、なんと2チーム存在し、それぞれが独立して活動。他にもバーベキュー大会や親睦会、さらにアンケート表彰やベストクオリティ表彰に加え、ユニークな推しメンコンテストや演芸など、その活動は多岐に渡って展開し、従業員間の連帯感を活性化している。

     こうした活動は同事業部が毎月発行する「宅配通信」に掲載され、出産や結婚、新入社員の紹介に至るまで幅広く報告。「やりっ放し」で終わりにしない仕組み作りも同時に出来上がっているのも特徴の一つだ。「宅配という仕事は、以前は離職率が高く、定着率の向上というテーマは必須だった」とする久保田社長。そして、その思いを汲み取ったかのようなこれらの活動は、同事業部に所属する従業員らの自発的な動きによって取り組まれ実現したことを考えると、特筆に値するものだと言える。

     また、同市内の玉家運輸倉庫(児玉聖司社長)では、懇親会などで社員同士が親睦を図る交流と共に、環境整備行動計画の策定などの共同作業を通じて、同じ目標に向かって行動するという「全体のチーム力を養う」取り組みを続けている。さらに、そのチームワークの強化を助長する一環として、性格や適性を分析する診断プログラムを導入。「社交的」「創造的」など個人の特性を知ることで、より高い次元でのコミュニケーションが期待できるものとして、適用範囲を広げていく意向だ。同社の児玉社長が語る「コミュニケーションを深めることはすべての基本。定着率だけではなく、仕事のモチベーション向上にも効果がある」との言葉は、ここまでの事例に共通する「コミュニケーション」というキーワードについての総括とも言える。

     ここで少し方向性の違う事例として、福岡県福岡市のレキウン(吉川信長社長)のケースを紹介しよう。「ドライバーは車好きが多く、良い車に乗りたいと思っている」と語る吉川社長は、そんな「車の良さ」を求めるドライバーの声に応えるように外観・設備・安全性にこだわった車両を提供してドライバーらを惹きつけている。

     主な設備例としては凹凸がなく手入れがしやすいタンク、車内に完備された温冷蔵庫、大型液晶で視認できる3方向モニターなどで、「一度この車両に乗ってしまうと他には乗れない」という声がドライバーから聞かれる納得の仕様ぶり。その評判は口コミで他のドライバーの知るところにもなり、「空きができたら入れて欲しい」という声が後を絶たないという。

     ドライバーの商売道具であると同時に仕事場でもある車両の充実が、高水準の定着率につながっている好例と言える。

     そしてもう一つ、運送業には多様な勤務体系が存在することからも、その家族、特に奥さんの協力と理解を得ることが何より大きな力となる。「ドライバーは奥さんあってこそ」と語る三栄運輸(三重県伊賀市)の山本貞夫社長は、時に優秀な社員の奥さんに対して、臨時賞与と直筆の手紙を贈ることもあるという。「家庭と仕事の両立」が信条でもある社長らしいエピソードであるが、こういった従業員の家族に対する細やかな気配りと共に、「社員を呼び捨てにしない」「思い付いたら突然、社員に直接電話することもある」などの、社長の従業員に対する行動の一つひとつが、同社の高い定着率を支えていると言えそうだ。

     その他にも「生活リズムの安定」「給料の良さ」「ドライバーの希望に沿った勤務体系」「あいさつの徹底」など定着率向上には様々な要素があり、また一方で世代交代がうまくいかないなどの弊害も聞かれることもあるが、総じてこういった事業者に共通して言えるのは、事業所に訪れた際に感じる「雰囲気の良さ」だ。それは社内の清潔感であったり、事務員さんの丁寧な対応であったり、あるいは社長の人柄であったりと理由はいくつか考えられるものの、会社を支えていくのは、やはりそんな一個人の姿勢の積み重ねではないかと思える。「従業員が従業員を連れてくる」とは定着率の良い事業者からよく聞く言葉だが、従業員が自らの会社を人に自信を持って紹介できる状況こそが、理想の労働環境と言えるのかもしれない。

     
     
     
     

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