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    労使紛争激化、運送会社が事業閉鎖 最高裁が組合主張認める

    2010年5月31日

     
     
     

     西日本のある運送会社が2月末に閉鎖した。同社には労働組合があり、事業閉鎖の大きな要因は労使紛争だという。元々は友好的な労使関係が築かれていたが、8年前に大口の取引先が倒産してから協調路線から対決路線の関係へと変わり、組合側のビラ貼りやビラ配りの活動が活発化。2年前には退職金の支払いについて、組合側の主張を全面的に認める最高裁の判決が言い渡され、組合側の主張する退職金規定を会社側が受け入れることになった。同社は一昨年秋からの経済不況も相まって経営不振が続き、未払い賃金の支払いは滞っており、事業の閉鎖に踏み切った。

     同社は昭和29年に設立された老舗会社。主に紙・パルプを取り扱い、トラックは15台保有。1500坪の倉庫事業を主力に事業展開してきた。設立から荷扱い量は順調に伸び続け、売り上げも堅調に推移。従業員の月給制の給与も高水準を保っていた。

     当時は業績の好調さを背景に、労働組合との関係は友好的であった。平成3年に労使で賃金協定を結び、同7年に退職金規定を作成した。その退職金規定によると、45年勤め上げた退職者は自己都合で1662万円、定年退職者は1995万円が支払われる。



     しかし、中小企業にとっては大きな負担である同規定が、後の労使紛争の引き金となってしまう。

     同14年5月、売り上げの7割を占めていた荷主が突然、経営破たんした。同社は事業を存続のために希望退職者を募り、約40人いた従業員を半減させ、高額だった退職金規定を改定し、同11月に退職金の上限500万円と大幅に減額した。

     これを機に労使関係がぎくしゃくし始める。「一方的な改定」と組合は反発、翌年から組合活動が活発化。社長に対して「協定を守れ!」「労働条件を一方的に変更するな!」としたビラが周辺に貼られ、地元住民にも多くのビラがまかれた。

     その後、さらに労働組合が攻勢を強める出来事が起こる。退職した従業員の1人が、同7年に取り決めた退職金規定による退職金1000万円を求めて提訴した裁判で同20年11月、最高裁で規定通り1000万円を支払えとの判決が下された。

     翌月、会社は組合と和解協定書を締結。同3年の賃金協定、大口荷主が経営破たんする前の同14年の退職金規定に戻す協定を結んだ。その後、勝訴した元従業員に続き、8人の元従業員が退職金などの労働債権の支払いを求めて会社と交渉を続けていた。

     同社では毎月150〜200万円の赤字経営が続いていた。未払い賃金の支払いは滞り、業績回復の見込みは一向に立たず、事業を閉鎖する苦渋の決断に至った。
     労働問題に詳しい関係者は「この運送会社は現状では考えられないほど福利厚生が手厚い『労働者天国』の会社であったと言える」という。

     「大口荷主が突然の倒産に見舞われ、最高裁で組合側の主張を認める判決が下りるなど不幸な事態に陥ったが、会社の非常事態時に現状に即しない労働債権を求める労働組合だけでなく、安易に労使協定を結んできた会社側にも非がある。労働組合に頼りきっていた部分は否定できず、労使双方の話し合いが足らなかったのでは」と話している。(大塚 仁)

     
     
     
     
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