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    どう防ぐ「内部告発」

    2010年7月28日

     
     
     

     企業の不正や不祥事を社外に暴露する内部告発。運送業界にかかわらず近年は増加傾向にあるが、荷量が減少し過当競争に陥っているトラック運送業界では、適正運賃が収受できず法令順守が難しい状況にある。内部告発を防ぐ手立てはあるのか、関係者に聞いた。また今回、弊紙の独自調査に加えトラボックス会員事業者にアンケートを実施。345社から回答を得た。

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    「危機管理体制を確立」コンプライアンス徹底が第一

     コンプライアンス経営は社会の流れであり、違法行為や不祥事を起こした企業が生き残れない社会は正常である。そうした時代に「内部告発をどう防ぐか」などと考えること自体、「違法行為を隠す方法」などの悪知恵で、犯罪の後押しをするようなもの。内部告発を防ぐ一番の方法は、コンプライアンス経営に取り組むしかない。

     内部告発によって、有名企業の場合には法的責任だけでなく、マスコミ報道などで社会的責任も問われることになる。初期対応でごまかそうとして、告発された事実を調査もせずに隠蔽し、その後に発覚した場合には、企業としての社会的信用は失墜する。事実調査や善後策の提示など、その対応には膨大な労力を要する。

     中小事業者の場合は、そこまで社会問題化することは考えにくいが、不正が通報された官庁からの監査などが考えられる。内部告発の防ぎ方は、コンプライアンス経営によって企業内の不正行為や不祥事の発生自体を防止していくしかない。

     不正行為や違法行為でわずかの利益や収入を得るよりも、万一の場合に失うリスクのほうが大きい。内部告発を防ぐ方法に頭と時間を費やすくらいなら、健全経営の努力をしたほうがいい。「会社の不正や犯罪を隠せ」と社員に強制することはまともではない。

     労使の問題で悩む経営者も増えているようだ。経営者が労働問題に無関心で危機管理意識が欠如していたために、企業の存続を揺るがす事態にまで発展することもある。長時間労働で過労死に至らせた場合など、事態は深刻だ。最近は労基署で過労死を認定しなかったケースでも、裁判で逆転することがあり、メンタルヘルスや雇用問題に関する訴えが激増している。

     トラックドライバーも過労死リスクや精神疾患と無縁ではない。裁判になったとき、「法令を知らなかった」「利益が出ないから労働環境の改善ができなかった」では経営者の責任は免れない。その点からもコンプライアンスが企業の危機管理につながる。

     だが、法令順守に取り組みながらも、理不尽な要求や労使トラブルに巻き込まれる場合もある。内部告発する側が不正な場合はどうするべきか。

     危機管理コンサルタントの堀尚弘氏は危機の処理には「加害者、被害者、救援者の視点」の三つが大切と指摘する。例えば事件や事故では、救援者は警察ということになる。こちらが加害者の場合でも、警察の協力を得ていくほうがスムーズに解決しやすい。不当な内部告発にあった場合も、こうした考え方は応用できそうだ。

     神奈川県の運送業者で、労使間の交渉がこじれた。発端はドライバーが大事故を起こした上に連続して無断欠勤したことだった。社長は話し合いをして再び働けるようにしたが、無断欠勤を繰り返したため解雇を通告。ドライバーは不当解雇と訴えたのだ。

     社長との話し合いでは決着が付かず、ドライバーは労基署に訴えると言い始めた。そこで社長は「それなら、どちらが正しいか一緒に行こう」と、連れ立って労基署に出かけた。経過を説明して、それぞれの考えを述べると、担当者はドライバーに非があることを理解し説得しはじめた。

     この場合、不当解雇を訴えている被害者はドライバーで、加害者は社長、救援者は労基署とすれば、労基署に敵対するのではなく、事実を提供して協力し合い、公正な判断を迫ったことが、すばやい解決につながったともいえる。(千葉由之)

    コミュニケーション強化を

     不況のあおりを受け、従業員が労基署に駆け込むケースが目立ってきている。関西の運送会社でも今年4月に数人の従業員が残業代の未払いをめぐって労基署に駆け込んだ。社長は従業員に対して不信感を抱くようになってしまった。ある運送会社社長は、「法令をすべて守ることは不可能。不況のときこそ労使のコミュニケーションは欠かせない」と強調する。

     従業員が労基署に駆け込んだのは割増賃金についてだが、同社では残業代については基本給の2割5分増で支払い、賃金管理を徹底してきたつもりだった。しかし、残業代計算の基になる基本給について、「運行手当や無事故手当が含まれていない」と主張して、労基署に相談を持ち込まれた。

     労基署は従業員の主張を認めて、会社側を指導。従業員には3か月間さかのぼって未払い残業代を支払い、給与体系を変更した。しかし、創業者から3代目となる30歳代半ばの社長は「なぜ、こんなことをするのか」と従業員に対して強い不信感を抱くようになったという。

     80人の運転者を抱える大阪府の運送会社は創業から半世紀以上経つが、従業員が労基署に駆け込んだり、労組が結成されたことはない。「従業員とのコミュニケーションをおろそかにしてはならない。常に不平不満に耳を傾けなければ」と創業時から会社を引っ張ってきた社長は強調する。

     同社は長距離も走るが、社長の携帯電話には運転者の連絡先がすべて登録されており、事あるごとに運転者と連絡を取っている。車種ごとに班長制を敷いて、班長と月1回は会食するほか、すべての運転者とも交代で定期的に会食し、対話を心がけているという。

     社長は「今の運送業界で法令を100%守るのは難しい。労基署に駆け込んだり、労組が出来るのは、労使のパイプができていない証拠。対話を通じて従業員の要望も聞き、辛抱してもらうところはお願いする。決して労を惜しんではならない。従業員を責めるのではなく、社長をはじめとする管理者が責められなければならない」と話している。(大塚 仁)

    特効薬は存在しない

     「すべてを管理できるわけもなく、これといった防止策はないのが実情だ」と話す千葉県の事業者。同社は雑貨配送を手掛けており、時には長距離もこなしている。そのため、法定労働時間は守れていないのが現状だ。

     「訴えられると、どうしようもない」とこぼす同社社長は、「防止策を強いて言えば、コミュニケーションを密にしていることかな」と話す。同社には約30人のドライバーが働いているが、ことあるごとに社長自身が声を掛けるようにしているという。

     「景気低迷で、経営はかなり厳しくなってきている。そのしわ寄せが結局、働くドライバーにいくわけで、不平不満は多々あると思う」という同社長は、「心がけているコミュニケーションが、果たしてどれだけ効果があるのかは分からないが、訴えられたらどうしようもない」と、防止策の難しさを話している。

     一方、埼玉県の事業者も労働時間は、法定時間を守れていない。それだけに、「ドライバー一人ひとりとの接し方が本当に重要だ」と同社社長は指摘する。

     朝のあいさつはもちろん、仕事だけでなく、ほかの話題を持ち出し、ドライバーと接する機会を増やしてコミュニケーションを図っているという同社長は、「社内に不平不満を作らないことが大切」という。

     例えば、辛い仕事をこなすドライバーには、それなりの報酬を用意。また平等な配車を行い、不公平な待遇にならないよう注意を払っているという。その上で同社長は、「中小・零細は、ドライバーといかにコミュニケーションを図り、不平不満をなくすかが重要」と話している。(高田直樹)

    物差し1本のシステム排除

     「個人として、会社として、業界として、目標や使命感を持てれば、一番いいんだろうけれど。内部告発の防ぎ方は分からないが、いわゆる内部告発のようなケチな振る舞いなど出ようのないシステムは、このようにつくれるのでは」──兵庫県内の事業者の提案だ。

     例えば、「燃費向上のための社内での取り組み。成績のいいものは使命感や誇りを感じているが、成績が芳しくない従業員がどうしても数人出てくる」と事業者は話す。

     「燃費はダメでも客の受けがいいとか、別のところで評価するシステムが必要」と指摘する同事業者。つまり、ものさし一本の会社は使命感、目標からの落ちこぼれを生み出し、ケチな振る舞いの温床になるのではとの見方だ。(西口訓生)

    法令に守れぬ部分「運賃下落が大問題」

     大阪府大東市の運送会社社長は「企業として法令順守は当然だが、すべてを順守できていないのも現実」と語り、「内部告発まではないが、ドライバーから指摘されることは多い」という。

     同社は主に地場輸送を手掛けて水物の荷も扱っており、「明らかに荷が過積載というケースもあり、ドライバーから問題を提起された」という。

     「継続的に荷があれば便を増やして対応すれば済むが、運賃の過当競争が続く中で荷主側も商品の繁忙期や閑散期、商品単価が下がっている時に、そこまでは対応はできない」と説明する。

     過積載は事業者だけでなく荷主やドライバーにも罰則が適用されることから、「ドライバーの言い分は理解できるが、それだけの運賃が出せない経済環境にも問題の一因があるのではないか」と心配する。「今は改善されて問題はないが、行政処分だけが強化されている中で、仮にドライバーが内部告発を行った場合はぞっとする」とこぼす。

     また、トラック運送業界特有ともいえる荷待ちや待機、渋滞などからの長時間拘束。残業代未払いなどの問題が頻繁に浮上している現状に、地場輸送をメーンにする大阪市此花区の運送会社社長は「日給月給制で残業の未払いはない」という。「労働契約を結ばないで、出来高払いで支払うから問題が起きているのではないか」と指摘する。

     日給月給制や業績給、歩合給など様々な給与体系があるが「当初から日給月給制で支払っているのでドライバーの残業代未払いはないが、立場の判断があいまいな管理職や配車担当者には、残業代未払い問題は起こりうる」と問題視する。

     同社長は「残業代を支給しているが経営はきつい。歩合制に切り替えたい」と本音を話し、「残業代を抑えるには、『効率よく業務を行え』としかいえない」という。「その会社の社長にもよるが、根本的に適正運賃であれば問題は起きない」とし、「どの業界でも問題や課題はあるが、内部告発にいたるまでに、その会社の対応過程で問題が大きく左右されているのではないか」と語っている。(山田克明)

    何でも話せる環境をつくる

     大阪府豊中市の運送事業者は「正直に会社の経営状況を話し、従業員の理解を得るしかない。残業代を払ってやりたいが、そんな状況ではない」と話し、「内部告発を防ぐために、普段から従業員とコミュニケーションをしっかり取って、何でも話せる職場環境を作るしかない」と強調する。

     また、大阪市の運送事業者は「社員に対して不満を面と向かって話し、相手の意見もその場で言ってもらうようにしている。話しやすい環境を作り出すために、普段からボウリング大会やバーベキューを通じて、コミュニケーションづくりを心掛けている」と話す。

     一方、同摂津市の運送事業者は「内部告発は防ぎようがない。訴えるなら好きに訴えればいい」と語り、「契約段階で、しっかりと話をして納得した上で正社員にしている。いやなら辞めてくれればいい」と強気なコメントも。

     さらに、「訴える人間に限って仕事ができない。そんな人間に残業代などを払っていたら、まじめに仕事をしている社員がバカをみる。そっちの方が不公平に思う」と話す。(中村優希)

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    結城運輸倉庫・結城幸彦社長「増加への対応は必須」

     「内部告発は今後、経営者の意に反して、ますます増えていくだろう。自分の会社は正しい、関係ない、などと言っている時代ではなくなる。だからこそ、『リスクマネジメント』の一環として対応したい」と結城運輸倉庫(東京都江東区)の結城幸彦社長。東ト協の副会長でもある結城氏は「会社の規模の大小、社会的知名度など全く関係なく、内部告発は行われるだろう」と指摘する。

     コンプライアンスの考え方が広く浸透する一方、従業員の会社に対する帰属意識は薄まり、「私怨」や「ガセネタ」も含めて内部情報が外に向かってうごめき出す社会。かつての日本では考えられなかった社会が間もなく到来すると危惧する。「全ト協など業界団体は早急にリスクマネジメント対策として取り組みを開始すべき」と話している。(土居忠幸)

    法令を守れば気にする必要はない

     「シートベルト着用の違反切符を切られないためには、シートベルトを着用して運転すれば良いだけ。わざわざ違反をして車にレーダーを付けたり、警察の取り締まり情報を収集するよりも根本的で明快だ。内部告発を防ぐことも、これと全く同じ」と話すのは、愛知県のトラック事業者。普段から法令を守っていれば気にする必要はないとのスタンスだ。

     客が食べ残した料理を使い回すなどして信用を失墜させ、廃業に追い込まれた船場吉兆を例に挙げ、「一時的にそれでしのげたとしても、法令違反をすれば必ずしっぺ返しが来る。業種に限らずコンプライアンスを徹底することが、結果として企業経営にとって一番の良策なのでは」と話す。

     岐阜県の事業者も「法令違反をして、それを知っている社員を口止めすることは、今の時代は不可能。過去に発覚した企業の不祥事がそれを証明している」という。

     一番心配するのが、トップの目の行き届かない場所での法令違反だという。それを防ぐために取り組んでいるのが、風通しの良い社内風土づくり。「おかしい、と思うことがあればそれに耳を傾け、可能な限り対処する。業務の特性上、100%できなくても、それに少しでも近づける努力だけはしていくつもり」と話す。(中道幸男)

    九段ヘッドオフィス・鈴木博氏「会社の状況を伝える」

     「会社の状況を日頃から伝えていれば、内部告発は避けられる」と社労士の鈴木博氏(九段ヘッドオフィス、東京都千代田区)は指摘する。「給料カットやサービス残業などドライバーが不満を持つことも、会社の業績が悪化していることを理解してもらっていれば労基署に駆け込まれることは減るはず」という。

     「日頃から何も知らせていない状況で、いきなり(賃金を)カットすれば、誰しも感情的になってしまう。大きな問題にならないよう普段からコミュニケーションを取るべき」(大西友洋)

    工夫しても対策は不可能

     「内部告発の対策なんて不可能」。そう話す社長の会社でも過日、円満に退社したと思っていた元ドライバーが、労基署に通報したのがきっかけで内部調査が入ったという。「他社に比べて見劣りするような給料とは思わないが、金額の多い・少ないは個人の受け止め方次第。働きの報酬としてドライバーが少ないと感じれば、それは確実に不満へとつながる」という。

     労組結成の対策にもなる…そんな考えで、古手のドライバーを経営側のスパイみたいに配置して現場の不満を耳に入れるという会社もあるし、「給料の手渡しを続けることで、日ごろから社員の反応に気を配っている」という社長もいたが、どこまで効果が出ているのかは不明だ。

     ある社長は「個人情報の保護かなんかの法律に引っ掛かるかもしれないが、同業者間でこっそりと『厄介な社員リスト』でも流し合わない限り、打つ手はないのが正直なところではないか」と話している。(長尾和仁)

    法律関係は社労士に相談

     東京都江戸川区のA社長は、労基関係はすべて社労士に相談するようにしているという。「わかったつもりで勝手に処理しないこと。小さなことでも一つずつ聞く。法令を順守するにはそれしかない。手を抜くと必ずといっていいほど、そこから問題が起こる」と話す。

     また、「どうしても時間外労働になってしまうこともある。この商売では必ずあることだが、常時ではない。ドライバーにもそれは日々説明して、納得してもらうようにしている」という。「後で言った・言わないの問題になれば水掛け論になる。だから必ずミーティングの時に議事録を残し、参加者全員にサインをさせている。文書で残すことが大事だ」と語る。(小澤 裕)

    コミュニケーション図り風通しのよい社内環境へ

     法令順守の流れから、労働者や管理職など内部からの告発で不正行為が明らかになり、倒産あるいは廃業という状況に追い込まれるケースも少なくないようだ。運送業界でも未払い賃金をはじめ、運行上での違反なども行政に告発されるケースも増えており、内部告発の防止対策に取り組む事業者も多い。

     大阪市の運送事業者は法律の適正な取り組みはもちろん、社員の不平不満を解消する様々な取り組みを行っている。同社社長は「最近、よく言われている未払い賃金問題では、就業規則・賃金体系、36協定など、ハード面で内部からの告発を避けるために、当社では現実に適合した形での見直しを専門家に依頼している」と話す。

     さらに、「社員の不平不満から内部告発が発生しないためにもコミュニケーションを心がけ、社長をはじめ幹部らが、できる限り風通しの良い環境づくりを行っている。内部の人間が一番社内のことをよく知っていることから大切に扱うとともに、法律を適正に取り組むことで、現状では内部告発などの問題は発生していない」と話す。

     やはり、違反行為を堂々と行うことや不平不満を放置せず、聞き入れることが内部告発防止に効果があるようだ。(佐藤弘行)

    未払い問題を丁寧な対応で解決

     東京都の社労士は残業代未払いで、従業員10人ほどの運送会社の事例を担当。大手宅配業者の配送業務を請け負っていたが、残業代未払いを主張する元従業員は、ある地域の配送を担当するドライバーだった。

     2年間で480万円の残業代の未払いを主張。会社は日給制を採っていたことから、「給与のなかに2時間分の残業代が含まれている」と主張した。「他の従業員もそれを納得して働いていたはずだ」。しかし雇用契約の中に、そうした文言はなかった。

     ところが元従業員の1日の配達荷物量、配達ルートと車両の燃費性能から想定される燃料消費量を算出し、実際の消費量と比べてみると実際の消費量が大きく上回った。元従業員の担当エリアから数十キロ離れた場所には自宅があったことから、配達ルートと自宅、会社を車で回り、燃料消費量を計ると実際の消費量とほぼ一致したという。会社はこのデータを正面から突きつけて争うことはせず、話し合いを行った。その結果、元従業員側も非を認め、未払い残業代は80万円まで減額になった。

     同社労士は「車両にタコグラフを装着していれば、スムーズに解決していた。会社にも労務管理などの問題があり、労使双方が弱みを抱えていたといえる。このケースでは、会社側が感情的にならず、一つひとつ丁寧に対応したことでうまく解決できた。日頃の法令順守はもちろんだが、何か起きた際には大人の対応をしていくことが最も大切だ」と話す。(岩本浩太郎)

    意見取り込めぬ体質が問題

     内部告発は、社内体制に問題があるようで、現場の意見を取り込めない体質が問われる。「内部告発されること自体、会社にとって恥である」とする認識を幹部がしっかり持って経営にあたることが最も重要だとする愛知県の事業者。

     同社では以前、事故を頻発するドライバーを雇用したことがある。適性診断の初期診断でも「問題がある」と指摘されたので、構内作業に異動するよう伝えたところ、ドライバーがいきなりキレて「訴えてやる」と叫ばれたことがあった。

     1週間ほど時間をかけて説得し、やっと構内作業に従事してもらうことになったが、「こちらの考え方を100%伝えるには、時間をかけなければならない。内部告発は、会社が故意に脱法行為をした場合に発生するわけではない。行き違いや、誤解で社員が内部告発してしまう時もあるのではないか」と指摘する。

     同事業者は、日常業務のなかで話し合いの場を持ちながら、コミュニケーションを図ることで防げることだと考える。「会社が脱法行為をして内部告発されるのではあれば、それは当然の話。語るに落ちる」と話している。(戸嶋晶子)

    品質委員会に運転者も参加

     愛知県のS社は、内部告発を防ぐため、今年から風通しの良い経営体制を心がけている。管理者だけで組織されていた品質委員会に4月からドライバーの代表も加え、そこで普段抱えている不満や悩みを話してもらうこととした。

     「知り合いの運送会社が昨年、ドライバーの労働時間超過の内部告発によって労基署が運輸局に通報。監査が入り3日間の営業停止処分を受けた。当社も監査が入れば、まったくシロとは言い切れない」と同社長。不満の芽を未然に摘み取るための判断だった。

     また、洗車機の導入など委員会で出された意見で改善した点も多く、「もともとガス抜きの意味合いが大きかったが、納得できる意見も多い。何より風通しがよくなったことで労使の距離が近づいた気がする」と話す。(加藤 崇)

    現場責任者の意識が大切

     「内部告発を防ぐには、その『予兆』を見つけることが大切。それには現場を任されている直接の責任者の資質にもかかわってくる」と話すのは近畿地方の運送事業者。「その責任者に全面的に任せていたら、仕事を下の人間に押しつけて、さっさと帰っていた。その下の人間は、朝までかかって仕事をこなしてフラフラ。帰り道に交通事故を起こしそうになったこともある」という。

     「これでは、下の人間の不満はたまる一方。この人は『仲間数人と労基署に駆け込む相談をしていた』ところまで追い詰められていた」と同事業者。「この話を耳にした私は早速、責任者を呼び出した」という。

     結局、その責任者は会社を去ることになった。「本社でそんなことになっているとは…」と、驚きを隠せない同事業者は「いい人材を派遣していた支店から責任者を呼び戻した」という。

     「内部告発を防ぐには、現場責任者の意識を、どこまで高められるかが重要」という同事業者。「現場の人間の不満などをいち早く察知し、『ガス抜き』などの手段を講じるのも責任者の仕事の一つ。それが出来ないようでは、何も任せられない。昔なら年功序列で大丈夫だったが、最近はそうもいかない。資質を持った人間を責任者に抜擢する必要がある。その辺の事情も変わってきたように感じる」と指摘する。(小西克弥)

     
     
     
     
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