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誓約書や念書飛び交い、世知辛さ募る物流現場
2010年9月2日
厳しさを増す行政処分に善後策を講じようと、トラック事業者がドライバーと誓約書や念書を取り交わすケースが急増している。飲酒運転が大きな社会問題となってからは、アルコールに関するルールを整備する事業者は珍しくないが、それ以外にも予想を超えた誓約書が目白押しだ。いったん交通事故が起これば管理責任を免れないのが物流会社の実情だが、家族同然の間柄ともいえる中小事業者でさえも、「万一の際の責任」を明確にするための文書が飛び交う世知辛い状況になっている。
兵庫県姫路市の物流会社社長は「公序良俗に反した行為があれば、会社の既定ルールに従ってペナルティを社員に与えることにしているが、それ以上のことはない」と話す。しかし、「そうした労使関係は少数派になりつつある」と指摘するのは広島市の物流社長。同社ではドライバーが飲酒運転をした場合、社内の安全委員会に対応を委ね、一定期間の乗務停止などの処分を決定する旨を、ドライバーの誓約書にも記している。「即座に解雇することは労基法上の問題以前に、労使間トラブルの引き金になる」と社長。
従来は、高速道路やガソリンスタンドのカード使用の誓約書を交わす程度だったが、飲酒運転や残業代の未払い問題が取り沙汰されるようになってからは、あらゆる事態を想定した文書を作成。
近年では「過労防止の義務」をドライバーにも書面で求め、「休むべきときに休むのも仕事。プライベートの過ごし方は自由だが、それを業務による過労とされてはたまらない」と話す。
また、「早朝出発を本人の都合で深夜に出庫するなど、運行指示書に従わない場合には始末書」と岡山市の物流会社。長距離輸送メーンの同社では、法で義務付けられた年2回の健康診断についても念書を用意。
「過労死したドライバーの遺族が『年2回の健康診断を受けさせていない』として裁判を起こした話を聞き、書面に残すようにした。口酸っぱく指導しても健診に足を運ばないドライバーがいるのは、どの運送会社でも共通の悩み」と話す。
一方、義務付けが始まる点呼時のアルコールチェッカー使用に備え、誓約書の準備を始めた事業者もいる。
すでに飲酒行為についての誓約書は取っているが、新書面には「運行途上での電話点呼の際、アルコールチェックの報告内容などに虚偽申告があれば解雇も含め、会社の取り決める処遇に不服は申しません」と、署名・押印する形になっている。
「会社ぐるみとされないため」と社長は話しているが、なんとも世知辛い事業環境になっているようだ。(長尾和仁)
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