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急増する交通事故 経営圧迫や高齢化に起因
2010年9月17日
厚労省が6日、労働基準局長名で各都道府県労働局長に発出した「労災防止緊急対策の実施」を求める通達は極めて異例の措置だった。とくにトラック運送事業では交通事故が急増し、8月速報値(1―7月集計)で死亡者数47人(前年同期比56.6%増)を記録。事態を重く見た厚労省は全ト協、警察庁などと意見を交換したほか、交通事故防止の徹底を関係機関に緊急要請。14日現在、各地の労働局担当官によるト協や関係団体への呼び掛けが続いている。未発表の事実も含めて取材した結果、事故の急増は?ドライバーの高齢化?中小・零細企業の経営圧迫──など業界の構造的要因も見えてきた。さらに「中型自動車」の事故激増も判明。「中型免許見直し」論議に拍車が掛かりそうだ。
「物量は決して増えていないのにリーマン・ショック以前の数値を上回る勢いで事故が多発している。異常事態だ」と、厚労省労基局の西田和史専門官(安全衛生部)はトラックの交通事故について感想を述べた。交通事故全体の死亡者数は3717人で前年同期比2.3%(84人)の増加。トラック運送事業の56.6%増は突出している。プレス発表では、深夜時間帯(午後10時から午前5時)に「死亡者は前年同期の9人から19人と2倍以上に増えている」ことから睡眠時間の確保、無理のない適正な運転時間など一層の徹底を図るよう呼び掛けたが、さらに「死亡および休業4日以上の死傷者」を出した事故は「追突」が19件で最多。次いで「衝突(対向車)」「横転等自損」がそれぞれ13件、「はねられ」2件と続き、「よそ見」「不注意」も含め、「過労」が原因と見られるという。
ドライバーの仕事の「経験年数」はほとんど関係ない一方、年齢別では「50歳代」「60歳代」に集中。高齢ドライバーが事故急増の要因となっている。西田氏は「若いドライバーがやっていた仕事を少々無理しても高齢者がするようになった」ためと分析。「一人ひとりのドライバーの負担は昔に比べて高まっている。労務管理、運行管理を徹底してほしい」と強調する。
従業員規模別の発生状況は「1―9人」8件、「10―29人」20件、「30―49人」5件、「50―99人」「100―299人」がそれぞれ6件、「300人以上」2件と、6割が「30人未満」の中小企業。
陸災防関係者は「中小・零細、下請け企業にしわ寄せがきている証拠」と指摘する。「この時期、荷主の要請に逆らうことなどできないので、眠らずに運転してしまう」というのだ。
深夜から早朝にかけての事故の多くは、事故を起こす前に改善基準告示違反が複数件あり、中には「1日半の走行距離が1200キロ以上」のケースもあった。また、居眠り状態で「オートクルーズコントロール」機能を使用し、路側帯でタイヤ交換していた2人をはね、死亡させた事故も起こっているが、これも高齢ドライバーの過労運転が原因だった。
警察庁の調べでは、死亡事故の第1当事者となった事故が「中型貨物」で、前年の65件から89件と36.9%の大幅な増加。「大型」9.5%増、「普通」31.6%減、「軽貨物」15.4%減に比べると異常に増えている。
警察庁は中型免許創設時の07年からデータを取っているが、中型の事故は減少傾向にあった。それが急激な増加に反転したことについてトラック関係者は「既得(07年以前)の普免から簡易な試験で中型免許が取得できる制度に問るのでは」「不慣れが原因であることは間違いない」などと憶測するが、今のところ原因は不明。警察庁は個々の詳細な内容を情報開示していないが、現在、盛り上がりつつある「中型免許」見直し論議に一役買いそうな気配だ。(土居忠幸)
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