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共配のメリット・デメリット 「効率的だが負担も大きい」
2017年8月18日
深刻なドライバー不足によるリスクを回避するため、大手ビールメーカー4社は、9月から北海道で共同配送を始めるというニュースが一部で報道された。人材不足への対策だけでなく、配送の効率化や物流コストの削減、自然環境対策などを進めるうえで、共同配送は有効な手段となる。共同配送には、複数のメーカーがそれぞれの荷物を一緒に配送する「荷主共同配送」と、輸送事業者間で同じ荷物を配送する「事業者間共同配送」とがある。それぞれにメリットはあるが、条件によってはデメリットがないわけではない。共同配送のメリットとデメリットについて、事業者に聞いた。
BtoBを得意とし、大型ショッピングセンターやモールへの配送に定評のあるプラスカーゴサービス(若佐照夫社長、東京都豊島区)は、共同配送ネットワークによる低コスト化を提案している。これまで複数の会社から配送されていた荷物を、大型ショッピングセンターやモールへまとめて配送できるサービスとなっており、搬入時間の制限や環境配慮などの面で荷受け側にもメリットがあるという。赤城和哉(国内営業本部兼営業開発本部)本部長は、「共同配送はCO2削減という意味でも、環境保護を重視する外資のメーカーと取引するうえで必要となる」とし、「まとめて納品することは荷受け側からも喜ばれることから、今後は共同配送が主流になってくる」と考えている。ただ、「共同配送に賛同する会社の多くは、コスト意識が強い」としており、「適正価格を下回るとサービスの低下が避けられなくなる」という。低コストでサービスを提供していくためには、運賃が課題となってくる。
西新宿エリアを中心に共同配送を行っている協同組合新宿摩天楼(村山正治代表理事、同新宿区)では、契約している高層ビルに送られる荷物を組合のセンターにまとめ、一括して配送している。配送する事業者は、組合員の中から抽選で選ばれた事業者で、年間約42万個の荷物を3台の専用車両でセンターからビルまで共同配送(横もち)を行っている。さらに、ビルの館内配送(縦もち)もあわせて、トータルで請け負っている。
同組合は1962年、新宿陸運事業協同組合として設立。永浦彰事務局長は「都庁が引っ越してきたころ、組合として新たな事業を始めようと考えてスタートしたのが摩天楼スタッフ事業だった」という。多くの事業者で配送していたものが1回で済むようになって効率が良くなっただけでなく、交通混雑が解消され、環境面でも良い効果を得ることができ、事業も拡大していった。永浦事務局長は「今後、共同配送が増えていくと思う」とし、「人の確保が課題。時代とともに状況は変わってくるので新たなサービスや信頼関係も築いていかなければならない」という。さらに「IT化にも対応していかなければ、難しくなってくる」と考えている。
共同配送はメリットが少ないとして取引を控えているのがイズミマトリックス(田口智一社長、埼玉県北葛飾郡)だ。2000年に共同配送を始めたが、「共同混載の荷物が減ってきている」と田口社長は話す。同社ではいまでも、引き合いがあれば、できるだけ対応するとしているが、「人件費高騰やドライバーの負担が大きく、運賃が安くて利益も少ない」ことから、「もっとシンプルに稼ぐことができる貸切便にシフトしている」という。
関東圏で小口混載便をネットワークしている事業者のなかにも、条件面が厳しく対応できなくなっているところも出ている。中小企業が集まってネットワークを作っても限界があるというのが現状のようだ。田口社長は「ほぼ昔のままの運賃でやらなければならない共同配送は、うちとしてはメリットがないような気がしている」とし、「負担が少なく利益を得ることができる貸切便に業態変更しないといけない」と考えている。
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