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なくならぬブレーキ火災 国交省、改善対策の報告求める
2017年8月25日
ブレーキの引きずりによる車両火災が各地で頻発し、啓発から1年以上経っても火災がなくならない。トレーラシャシーについて国交省は今夏、メーカーにブレーキ部品などの改善対策が、どの程度進んでいるかの報告を求めている。8月末までが報告期日で、報告がそろい次第、改善対策の制度の一部見直しを含めた検討をすることが、国交省への取材でわかった。改善対策は制度上、進捗状況の報告義務はメーカーになく、国交省がメーカーに進捗状況の報告を任意に求めるのは異例の措置だ。届け出た改善対策は少なくともメーカーがきちんと処置するはずといった信頼がその名に値するのか。根絶されないトレーラシャシー火災があぶり出された格好だ。
トレーラシャシーのブレーキ部品に関しては、複数のメーカーが改善対策を国交省に届け出ている。火災を起こす原因の多くは、スプリングチャンバと呼ばれる部品の不具合から生じる、ブレーキの甘利きだ。各メーカーは、スプリングチャンバの定期的な交換をユーザーに呼び掛けるとともに、別の部品も交換することで改善させるとしている。こうした不具合とそれに伴う火災は少なくとも数年前から指摘され、改善対策の届けも出されてきた。もっとも、実際に改善対策が施されてきたかどうかは各メーカーしか把握していない。シャシーユーザーである神戸市内のトラック事業者は今夏、自社で起きたシャシー火災によって保有シャシーはもちろん、積み荷とともに道路構造物まで延焼させてしまった。
「シャシーが燃えるなんて!」。先代から数十年来、シャシーを使った事業を手掛けてきたが、車両火災は初めてで、原因については皆目見当がつかなかった。その後、周囲の同業者などからの声掛けがあって初めて、2年以上前に改善対策が届けられているシャシーだということがわかった。
事業者は、「火災の恐れのある改善対策が出ていることがわかっていれば、すぐに部品交換をしていた。2年以上も通知すらなかったのは不法行為に当たる」として、メーカーを相手に訴訟を検討している。
国交省審査・リコール課は、改善対策が届けられているにもかかわらず、ユーザーが知らないうちに火災を起こしてしまう今回のような事態を重視し、改善対策の進捗状況を各メーカーに報告するよう、異例の要請をし行った。改善対策と似たリコール制度は、道路運送車両法の中に記載があり、同法の保安基準に「適合しなくなるおそれがある状態又は適合していない状態」を要件として、リコール実施状況を一定期間まで報告の義務がある。
一方、改善対策は同法の中に記載がなく、日本自動車工業会や日本自動車車体工業会など、メーカー6団体に対して旧・運輸省自動車交通局長(現・国交省自動車局長)が出した「依命通達」(自審第1530号、1994年12月1日)の中に位置づけられるに過ぎない制度だ。
また、リコール制度の規定は、「改善対策の届け出について準用する」(依命通達より)と定められるものの、実施状況の報告についてだけは準用規定から除外されている。依命通達を受けたメーカーは、改善対策の実施状況を国交省に届ける義務が定まっていないことになる。シャシー火災が頻発することと改善対策の実施状況報告がないことについて審査・リコール課は、「8月中に上がってくる報告の全体を見て判断したい」と述べ、改善対策にも実施状況報告義務を課すことも含めた依命通達の改定の可能性を否定していない。
その上で同課は、「一部メーカーだけの実施状況が低いのであれば、なぜこういうことになっているのか指導する」とも述べ、メーカー各別の問題として扱う姿勢も崩さない。
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