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ブログ・小山 雅敬
第152回:運送会社の最適な経営規模は社員30人程度か
2019年3月19日
【質問】当社は創業以来、経営規模を順調に拡大し、現在は保有車両100台を超えるまでに発展してまいりました。しかし、最近は労務管理などに様々な問題が生じており、社内のひずみが表面化しています。適正な規模への分社を検討中ですが、運送会社の最適な経営規模について教えてください。
今までに、上場の大手運送会社から社員数10人未満の中小・零細企業まで大小様々な運送会社を訪問し、その経営内容を見てきましたが、運送会社の経営規模には大小それぞれメリット・デメリットがあり、一言で最適な経営規模を断定することは出来ません。しかし、経営効率と労務管理面、その他総合的な観点で各社を振り返ってみると、社員数30人程度の運送会社が最も安定した経営が出来ている印象があります。
最近は、比較的規模の大きい運送会社で労務管理上の課題が急速に表面化しており、多数の社員を従来のピラミッド組織で一元管理することに限界が生じています。
このところ、大規模の運送会社からの相談が増えている背景には、人手不足の影響で未経験者を含む多様な思考を持つ人材が入社してきたことがあります。意識が多様化する社員に対し、優秀な管理者が、まだそろっていない会社では、実に様々な問題が発生しています。また、経営効率の面に視点を移すと、最近は売り手市場で比較的取引条件の交渉がしやすい経営環境になりましたが、将来を見通した時、人口減少から経済発展は望めず、右肩下がりの経営環境では変化に柔軟な対応ができる経営体制を構築する必要があります。さらに近年の行政処分強化により、突発的な事故で会社全体が事業停止になるリスクが現実味を帯び、大規模経営の本来のメリットである規模の利益よりも経営リスクのほうが上回ってきた感があります。
最近、運送会社から分社化の相談をよく受けます。管理可能な規模に分社してグループ経営に移行し、グルーブとして最適な経営戦略を立てていく方式です。運送会社では、経営規模が拡大して社員数50人から70人程度になってくると、それまでの組織や社内制度では管理が困難になってきます。社員数100人を超えてくると各営業所で問題が続出するようになります。ところが現実は、社員数400〜500人規模の会社でも小規模だった時と同じ体制で運営している会社も存在します。これはもう管理の限界を超えており、何か、ことが起こればしょうがないという体制と言えます。そのような会社は早めに分社化を検討し、適正な経営規模で責任のある経営管理体制に移行すべきでしょう。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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