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    脱退か解散待つか 先行き見えぬ年金基金

    2012年10月23日

     
     
     

     数十人の従業員を抱える西日本地区の運送経営者は過日、トラック年金基金を脱退した。「隠れ借金」という大きなリスクを消すための企業トップとしては当然の決断だったが、正規の手続きを経た脱退にもかかわらず、「そっとしておいてほしい」と、まるで後ろめたさを感じているかのような反応。ある関係者は「抜けられるのは銀行が優良と判断した会社だけ」と話すが、なかには数億円を払って〝清算〟するという大型脱退が相次ぐ年金基金も出始めている。


     基礎年金(国民年金)と厚生年金に上積みされる「3階部分」の厚生年金基金。国が担う厚生年金保険の運用の一部をトラック年金基金などが代行し、それで得た運用益によって給付額を上乗せしてきたが、運用環境の悪化による財政難が指摘されて久しく、年金基金が抱える「含み損」が結果として加入事業所にとっての「隠れ借金」になっており、仮に脱退しようとすれば「基金によって違いはあるものの、従業員一人につき100万円前後、なかには同200万円近くを払わないといけないケースも耳にする」(事情通)というのが近年の状況だ。
     前出の運送会社の場合も脱退にともない、債務や不足金として数十人の従業員分に相当する5000万円強の特別掛金を支払っているが、「運用環境が大幅に改善されない限り、まだ金額が膨らむ可能性は高い」と判断した。こうした脱退の動きは周辺地域でも広がりを見せ始めている。
     隣接県の年金基金では今春、2億数千万円を支払って脱退した運送会社が話題になったが、このほど別の事業者がさらに多額の〝清算金〟を支払う形で追随した。事情を知る加入企業の関係者によれば「(両社より)さらに大規模な脱退がこの先も噂されている。ただでさえ厳しい経済環境のなかで、それほど多額の金銭を支払ってまで脱退しないといけないくらい深刻なのかと心配になる」と話す。
     脱退した運送会社の経営者らの話では、いずれのケースも「(脱退するための)貯金があったわけではない」と、金融機関のバックアップが脱退に踏み切る決め手となった様子。金融業界に詳しい関係者の一人は「銀行は優良企業に融資できるうえ、年金基金を脱退する代わりに確定拠出年金へ移行させれば預託金と同時に、その手数料収入まで見込めるわけで、人助けのように見えて立派な商売になる」と明かす。
     一方、加入事業者の間で「急いで抜けるのが得策かどうか…」との声が聞かれるのも確かだ。厚労省が9月下旬、厚生年金基金制度の将来的な廃止を検討すると言い出したことで、現場は一段と混乱ムードにあるが、いずれにしても加入事業者にとっては個々の判断に基づく「脱退」か、所属する年金基金を「解散」するかの二者択一に迫られる可能性はぬぐえない。
     ただ、国に返上する格好で年金基金を解散する場合、代行部分の資産に相当する最低責任準備金の不足分を補てんする必要がある。その一発逆転を狙った結果が「AIJ投資顧問による年金消失事件」を生んだともいえ、「債務や不足金を払って脱退するために会社は多額の負担を強いられるが、従業員は一時金などを受け取れる」という脱退を選ぶか、「従業員は一銭ももらえないが、企業負担はいくらか減額される」という解散を待つか…という限られた選択肢。とはいえ、脱退を決断するには金融機関による「優良企業」のレッテルが不可欠という悩ましい現実があるようだ。

     
     
     
     

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