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射界
2019年10月7日号 射界
2019年10月14日
魔がさしたというか、人の目をはばかるような場所に足を運ぶ。えてしてこんな時、知人とばったり顔を合わせることがある。お互い、バツの悪い表情で無言のまま擦れ違うが、心のなかは同じ思い。ふと「隠れたるより現るるはなし」の一語を思い浮かべたことだろう。古典『中庸』にある教え。
▲誰にも内緒にしておきたかったのに知られてしまい、秘密にしたかったのにバレたことがある。浮世は皮肉と嘆じる余裕もないまま『中庸』は「微(かす)かなるより顕(あきら)かなるはなし」と続く。見えるか見えないか微妙なものほど、実は明々白々たる事実となって明らかになる…である。さればこそ「独りになった時、心を正して行いを慎むべし」だ。
▲人格を評して性善説と性悪説がある。従来は性善説が多かったが、色んな文化や制度が採り入れられ、複雑かつ成熟化するのに伴い性善説では律することが難しくなった。いまの風潮として法の不備が指摘されているのが現実。それをいち早く指摘しているのが古典『韓非子』だが、改めて「あなたは?」と訊ねられても、即答しかねるのが本音ではなかろうか。
▲生まれたときは性善説と答えるのに躊躇しないだろうが、浮世の荒波にもまれながら、得体の知れない欲望や雑念に打ち勝って生きるには、相応の知識と素質を養う必要があろう。社会の複雑・成熟化を後追いする法の弱みは仕方ないだろうが、その前に、一人ひとりが自覚して善悪を峻別できるだけの倫理観を養いたい。そうすれば〝あおり運転〟などはない。
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