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  • ブログ・花房 陵

    3PLという誤り

    2008年4月14日

     
     
     

    物流戦略という実態がようやく分かるようになってきました。コストダウン、販売の高速化、グローバル経済を地でいくように生産と調達がSCMによって店頭と工場が直結しています。まだ自営物流をしなくてはならない理由が無くなった時、きれいなビジネスモデルが霞んでくることもあります。
    ●アウトソーシングの本質
    物流活動に外部協力者のパワーを利用していない企業はありません。専門性やコスト、ノウハウなどの理由から、部分的だったりかなり広い範囲だったり、アウトソーシングを利用しない理由はなくなりました。自社のノウハウで守るべき中核事業というのか、外部に頼めない事業やサービスはむしろ標準化や科学性、言葉や設計書で説明できない遅れた範囲とも言えるでしょう。
    自社の方が経済的でしかも、競争優位になるプロセス以外はすべてアウトソーシングする運命にあります。すでに潮目が変わってしまいました。中国の生産工場が日本の労働者に職を転換したように、今はインド、ロシア、ブラジルまでが国を挙げてのサービス輸入者になっています。ITも顧客サービス部門や設計開発部門のその傾向が顕著です。
    得意でないところ、経済性やノウハウの蓄積効果の面からでもアウトソーシングをできないプロセスを探す方が難しい様相です。セールスもサービスも製造もそうです。自社が機関設計の自由度を上げて、大きくも小さくも異業種と合従連衡できるようになっているのだから、戦略は自社ではなく市場を見るチカラそのものです。

    ●物流のアウトソーシング最終形

    輸送手段、保管倉庫、作業要員、システム保守、配車管理、総合マネジメントなど、物流活動のほとんどがアウトソーシングの対象になっています。分かりやすいコスト比較では、実務者の業界賃金格差で生産性の違い=平均給与の違いで選択されています。
    製造、流通、サービスという業種比較が格差を生んでいるように、物流プロセスでも委託業界と物流業界の平均賃金がコスト効果になっています。そんなオープンな情報の中での提案やアイデア、設計のノウハウというのは意味が違います。むしろ就業規則や稼働時間の違いが格差を生んでいるのです。
    自社物流は稼働率と生産性では優位性が発揮できません。標準化や科学性が劣るから引渡ができないという障害があるだけです。自営物流を守る理由は情緒しかないのが実態で、ならば地崩れのごとくに自社物流から委託物流が進んでいます。
    最終形は物流部門の切り売り、M&Aそのものです。自社の車両や倉庫、センターなどの資産を売却して、要員と旧来のシステムは転籍ということになります。受け入れる側は、急激な資産の増加と売上・経費の急上昇を招くことになりますので、今までの物流管理や業績指標を見ているだけでは収益の安定が不可能です。
    利益は率と額と双方でコントロールしなくてはならないからです。物流業界にも適正規模というコントロールのモデルがあるのだから、急に物流売上高が20%増えて、一時経費が30%も増えるときに過去の利益率が維持できる方が不思議です。
    ●全部アウトソーシング
    自営物流部門が売りに出されるのが総合3PLというものでしょう。売る側も買う側も現場の当事者にとっても、大事件です。自営物流が順調なら、企業内組織の壁というのも整然としていて、コストや品質の真の原因である製造と販売が物流に悪影響を及ぼしていないことになります。そうでないから物流改革が必要と声だかに言われてきたわけです。組織内部に問題を隠しながら。
    物流を切り出したい原因は、製造と販売の壁や連携、仲の悪さ、SCMの実行力が乏しいことにあるわけで、その時に物流当事者はすでに充分居心地悪い思いをしています。3PLの現実がM&Aに似た姿であることを思うと、新天地を求めることが本当にきれいな答えなのかという悩みも迷いもあるはずです。
    経営判断になった3PLビジネス提案書にうたわれている、コスト精度サービス向上が、現場のため息や不安に乗っていることも考慮しなくてはなりません。提案側も資産の評価という作業に、経済性と数値判断だけでは検討不足と言われかねません。現場の従業員に蓄えられてきたノウハウ、技術、業界知識を年齢と経験だけで処遇する業界格差は、悩ましい問題を生み出します。
    ●スッキリ出直して、理想モデルを追求する
    切り出された自営物流部門は、しばらくの間はヘッドに物流会社のマネージャーが付きながら従来の物量をこなしています。計画した生産性と品質を維持できるようになれば、次の段階に進みます。受託物流の範囲を広げたり、他社の物流を請け負うように事業を拡張してゆくのです。
    この段階をスムースに越えていかないと、急激に増えた売上と経費、固定資産の増加に伴って利益の率と額がバランスを崩してしまうのです。自営物流を取り込む3PLも、資産や人の受入がその本質にあるとは思ってみなかったようですが、最近はむしろこちらが主流。
    きれいな提案書で営業している物流モデルにも、意外と悩ましい現実やご苦労があるものです

     
     
     
     

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  • 筆者紹介

    花房 陵

    イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント
    コンサル経験22年、物流から見た営業や生産、経営までをテーマに 28業種200社以上を経験。業種特有の物流技術を応用して、物流 の進化を進めたい。情報化と国際、生産や営業を越えたハイブリッド 物流がこれからのテーマ。ITと物流が一体となる日まで続けます。

     
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